スズメが年3.6%のペースで減少 見つけられるのか?
テレQ(TVQ九州放送)
10月に環境省などが発表した調査で、私たちの身近にいる鳥たちが急速に減っていることが分かりました。一体、何が起きているのでしょうか。 街の人 「見ない。カラスはよく見るけど」 「子どものときはいっぱいいたと思う(Q.最近は)全然」 身近にいた鳥の数が、大きく減少しています。そのひとつが、スズメ。 梶屋綾気象予報士 「福岡市の中心部、けやき通りに来ています。街路樹や電線はあるんですが、スズメの姿は見当たりません」 環境省などは全国325カ所の調査地点の、2008年度から2022年度までのデータを分析しました。その結果、16種類の鳥の数が大きく減少し、スズメは1年あたりに換算すると3.6%減少していたことが分かりました。減少率だけを見ると、絶滅危惧種の基準である年3.5%を超えるペースです。また別の調査では、20年で5分の1に減少したという報告もあります。なぜスズメはそこまで減ったのか。専門家は、大きく2つの原因があると指摘します。 バードリサーチ 植村慎吾さん 1.子育てをする場所の減少 「雨戸の戸袋や瓦の隙間などで繁殖をしている。新しい家だとそういった隙間がない」 集合住宅の増加などによって、雨戸や瓦といったスズメが巣を作る場所が減ったということです。 2.エサになる昆虫の減少 「新しいタイプの農薬で田畑にいる昆虫を減らしてしまうものがある。地表付近にいる昆虫は、暑さに耐えられなくなっている」 昆虫が減少した要因は、農薬や厳しい暑さ。近年の異常気象は、生き物にも影響が大きいようです。今まで当たり前に見かけていたスズメには、もう会えないのでしょうか。今回の調査にも参加している、野鳥調査のボランティアグループヤマガラの会の宮石さんに案内してもらいました。 梶屋気象予報士 「福岡市西区の郊外に来ました。Q.スズメに会いにくくなった」 宮石さん 「10年前と比べると減っている気がする」 敵の姿を見つけやすい電線の上や身を隠しやすい草むらなど、スズメがよくいる場所を探していきます。 「手前がスズメ!電線の上」 早速、電線の上に並ぶスズメを発見!10羽ほどの群れでいます。 梶屋気象予報士 「スズメを探すことになるとは思っていなかった」 宮石さん 「スズメを探すのは、今は簡単ではなくなってきた」 多くのスズメを探すため、住宅街へ向かいます。 「家がある方が隠れ家がある」 「すごい!大群」 「40羽いる」 宮石さんも最近ではなかなか見ないという、数十羽単位のスズメに会えました。一方、農地では1980年ごろと比べスズメの減り方が顕著だといいます。 「稲が大好物なので田んぼに行くと、上空が真っ黒になるくらいだった。多いときは千羽とかいた」 穀類を食べる「害獣」でもあるスズメは、1980年代前半には年間300万羽以上が捕獲されていました。しかし、今では生息数が大きく減り状況が様変わりしています。一方、スズメ以上に近年減っているのが、日本だけに生息する「セグロセキレイ」です。スズメの2.4倍のペースで減っています。 「セグロセキレイは、街なかにはほとんどいない。川の上流域。水のきれいな場所を生息地としている」 その姿を見ようと、福岡市早良区の室見川上流にやってきました。川沿いや、その周りの畑を探して歩きます。 「あ!おった!」 背中から頬まで黒いのが特徴の、セグロセキレイです。 「前はもう少し下流で見た。今はほとんど(下流では)見られず、上流域でしか見られなくなってきている」 専門家は生息域や数の変化には、九州ならではの事情もあると指摘します。 バードリサーチ 植村慎吾さん 「(九州は)豪雨の影響で、河川整備が進んでいる。護岸が垂直になるなど、生き物が住む環境ではなくなった」 人の命を守るための防災事業が、生き物たちの環境を変えたと指摘します。野鳥が減少することで、私たちへの影響はあるのでしょうか。 「私たちも自然の恩恵を受けて生活している。(生態系が崩れ)農作物などこれまで通りに 利用できなくなる危機を感じる」 調査で示された、野鳥の大幅な減少。人の生活がもたらす生態系への影響が、またひとつ明らかになりました。
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