阪神藤浪と日ハム佑ちゃん。共に復活を目指す崖っぷちの2人の甲子園優勝投手は沖縄対決に何を見せて何を感じたのか?
ネット裏、ヤクルトの山口重幸スコアラーが驚いたのは、続く4番の右打者、横尾への投球内容だった。カウント2-1から坂本のサインにクビを振ってスライダーを連投。それも続けてストライクゾーンに投じてショートゴロに打ち取ったのである。 「右打者にどんなピッチングをするのかを見たかった。四球からスタートして今までなら崩れるパターンの場面で横尾。相手が150キロのストレート一本に絞っているところにカウント2-1から変化球を続けて、しかも、それがしっかりとコントロールされていた。去年までの藤浪とはまるっきり違う。驚いたね」 2回には右打者の渡辺をセカンドゴロ。左打者の海老原を歩かせたが、右打者の高濱にスライダーを軸にカウントを整え、最後も130キロのスライダーを外角低めに曲げて「5-4-3」の併殺打に仕留めた。課題とされた右打者に対しても死球になるような抜け球は1球もなく、キャッチャーが捕球できないような引っ掛け球もなかった。 元中日、山本昌臨時コーチの指導で、手首を立てテイクバックを小さくまとめる新フォームに挑戦、“暴れ球”の封印に取り組んできたが、4日のシート打撃に続けて成果は出した。育成選手が2人並ぶなど日ハム打線は一線級ではなかった。だが、先のシート打撃ではストレートで打ち損じを誘えずに痛打され、「次は間を考えピッチングをしたい」と掲げていた課題を見事にクリアした。 しかも、ネット裏の”007”の計測によると、走者を置いてのクイックモーションのタイムが1.1秒台。驚異的なクイックで150キロ台を連発させていた。牽制が不得意で、足でひっかきまわすのも他球団の藤浪対策のひとつだが、「クイックが早くなっている。これでは簡単に走れない」との成長ポイントまであった。 「内外まではいかないが、全体的にストライクを取れたのは良かった。今日はピッチングをしたいとゲームに入った。バッターとの間合いを見る余裕もあった。そのあたりも良かった。(腕の)縦ぶりと、それだけ(言葉で)言うと安易だけど、求めているものがしっかりと出せた。自分のやりたいフォーム、体の使い方ができていると思う。まだまだ完璧じゃないが、いい感じじゃないかなと思います」 試合後、藤浪は、そう手ごたえを口にした。