前夜祭だけじゃない!?愛知・津島市と愛西市で600年以上続く「尾張津島天王祭」の神事「朝祭」選ばれし一番鉾に密着
5艘のまきわら船が水面に映り、幻想的な姿を見せる愛知県・津島市と愛西市の「尾張津島天王祭」は、約20万人が訪れる県内でも有数の祭りです。実は、まきわら船が見られる「宵祭」が前夜祭で、翌日に行われる「朝祭」が神事の本番です。今回は、「朝祭」に思いを懸ける男たちに密着しました。 【動画】戦国武将も見た!?「おぼれそう…」高難度の伝統泳法を受け継ぐ一番鉾の泳ぎはこちら【8分13秒~】
まきわら船だけじゃない!神の道を清める神事「朝祭」
600年以上の歴史を持ち、織田信長や徳川家康も観覧したと言われる「尾張津島天王祭」。「津島神社」から「丸池」に神様を迎え、無病息災を祈るこの祭りは、「ユネスコ無形文化遺産」にも指定されています。 前夜祭「宵祭」を終えた翌朝、祭り会場に向かってみると、まきわら船を模様替えしている人の姿が。神様を「津島神社」にお返しする本祭の神事「朝祭」に向けて、準備が行われていました。 「朝祭」の主役は、「市江車(いちえぐるま)」と呼ばれる船です。まきわら船との違いは、竹で作られた「布鉾(ぬのほこ)」が取り付けられていることです。では、布鉾を使って何をするのかを尋ねました。 (市江車保存会会長・佐藤正直さん) 「露払いってあるでしょ?汚れを払う。それが鉾持ちの役目」 「市江車」の役割は、神様の帰る道を清めること。「鉾持ち」と呼ばれる10人の男が、「市江車」から次々と池に飛び込み、その水で鉾を清めます。男たちは約200m泳いだ後、神の通る道を清めるため鉾を持って400m走ります。
鉾持ちになれるのは未婚男性のみ!伝統を守る一番鉾のアツい想いとは
鉾持ちになれるのは、地元に住む15~30歳の未婚男性のみ。中でも、一番鉾は、「朝祭」の始まりを告げて道を切り開く、鉾持ちのリーダー。三番鉾は、神様が通るため神社に張られた結界を切る役目があります。また一番鉾を先頭に泳ぐ様も、祭りの見どころの1つです。 選ばれし者にだけに許される一番鉾は、鉾持ちの憧れ。2024年の一番鉾を務めるのは、参加歴12年目で最年長の永井祐次さんです。 (一番鉾・永井祐次さん) 「緊張しかない。一回一回が大事」 永井さんが祭りに参加できるのは、今年を含めて残り2回。高校1年生で参加してから、毎年最前線で祭りを見てきました。 (一番鉾・永井祐次さん) 「参加者は同級生が多かったが、結婚などでみんな辞めてしまった。1人だけ残ってどうにか祭りを続けるために、少しでも力になりたかった」 これまで鉾持ちを引っ張り、「朝祭」を守ってきた永井さんには強いこだわりがありました。 (一番鉾・永井祐次さん) 「昔は、鉾を頭に乗せていた。ひもを通して、くわえて泳ぐ」 池を泳ぐ際、通常だと鉾のひもを肩にかけて平泳ぎをするのに対し、永井さんは、片手で頭に乗せた鉾を支えながら泳ぐ、高難易度の伝統泳法を伝承。現在この泳ぎ方ができるのは、2人だけなのだとか。 (一番鉾・永井祐次さん) 「完璧には再現できないが、できるだけ残していきたい」