ナイキの厚底シューズの最新作「ナイキ アルファ フライ 3」が発売間近。ひと足先に大迫傑が履いた!
アップデートした最新作はどう感じたのか。陸上競技選手、大迫傑に直撃した。 【写真を見る】「ナイキ アルファ フライ3」のプライスとディテールをチェック!
常識が覆る瞬間
革命が起きたのは、2017年だった。それまでトップランナーのシューズといえば、足の力をより強く地面に伝える薄いソールが常識とされていた。しかしナイキはまるで逆の発想で、吸収力と反発力を両立させた超厚底のランニングシューズを誕生させた。 以来、NIKEの超厚底シューズはまさに革命的な世界記録を次々と樹立した。もっとも印象的だったのは、2019年に五輪二連覇を達成したマラソン界の“絶対王者”エリウド・キプチョゲが記録した1時間59分40秒の記録。非公式レース、非公認記録ながら、夢とまでいわれていた2時間切りの達成は大きなニュースとなった。そのときキプチョゲが履いていたのもナイキの超厚底シューズの試作品だった。 ■新型は“バケモノ”だ 東京五輪で6位入賞、パリ五輪への出場を期待される日本を代表するマラソンランナー大迫傑もまた「厚底シューズ」の申し子のひとりといえるだろう。大学卒業後、ナイキの所属としてシューズの開発にも携わってきた。そんな彼が「これまでとちがう」と断言するシューズ「ナイキ アルファ フライ3」が誕生した。 「ケニアでのトレーニングなどでプロトタイプを履いて何度か走ってみました。いい意味でアルファフライっぽくないシューズだと思います。これまでのアルファフライはソールが前後でわかれていたんですが、3はそれがひとつになっている。ランナーによって好き嫌いがあると思うんですが、僕の場合いままでのアルファフライはちょっとバランスを取りづらい感じがしていました。でもこの3はそういう感覚がまったくなく、力強い反発を受けて気持ちよく走ることができる。自分のランニングフォームにあっていると感じました」 2023年にケルビン・キプタムが2時間00分35秒のマラソン世界新記録を樹立したときに履いていたのが、このシューズの試作品。歴代アルファフライのなかでも最軽量となったこのモデルのおもな改良点は、①ソールの踵と前足部を真っ直ぐに連結させて踵からつま先への体重移動がスムーズになった。②フルレングス カーボンファイバーのフライプレートの幅を広げ推進力と安定性を高めた。③最適なトラクションとグリップを発揮する新しいファスト ショット アウトソール、アッパーに新しいアトムニット 3.0を採用し、足の包み込みや通気性と中足部のサポートを向上させた。 「早く走るためのすべてが揃った“バケモノ”のようなシューズです(笑)。足を入れたときの感覚から違いを感じてもらえると思います。市民ランナーの方でも自己記録を更新したいと思うならぜひ試してほしいです。ますますランニングが好きになるし、ハマっていくと思います」 白を基調としたシンプルなデザインも気に入っているそう。 「この厚底のフォルムだけでじゅうぶん目立つので、アッパーに派手な色とか必要ない。こんなところにエアを入れませんよ、普通は。ナイキだけのデザインになっていると思います」 2021年の東京五輪後に現役を引退。後進の育成を行っていたが、翌年7月に現役復帰。2023年10月に開催されたマラソングランドチャンピオンシップで3位に入り、パリ五輪出場の可能性をのこす大迫選手。 「なにがなんでもパリ五輪に出たいという思いは、あまりないです。東京五輪までは自分以外の誰かのために走っていた部分もあったんですが、いまは自分のために、自分の走りを突き詰めていきたい。そのチャレンジを楽しめているし、これからもそれを続けていきたいと思っています」 自分のために走る。大迫傑はアルファフライ3で軽やかに、力強く地球を蹴り続ける。
文・川上康介 編集・岩田桂視(GQ)