孫正義が「つまらんなぁ」と感じる“絶対に仕事ができない人”の特徴
天才的な経営手腕で、ソフトバンクグループを一代にして大企業に育て上げた孫正義氏。側近や社員らは「つまらないヤツ」と思われないように、必死に食らいついたという。そんな孫氏が会議で大事にしたこととは?(イトモス研究所所長 小倉健一) ◇◇◇ ● サンダル姿で現れた孫正義 ソフトバンクを創業した孫正義氏は、日本を代表する実業家であり、投資家だ。インターネットの黎明期からその重要性に気づき、今では通信、AI、IoT、ロボティクスなどの最先端技術にまで事業を広げている。 1995年に「米ヤフー」へと投資し、1996年に国内初の商用検索サイト「Yahoo! JAPAN」を開始した。1999年にジャック・マーが創業した「アリババ」に対し、2000年には巨額の投資を決断。 2006年にボーダフォンを買収、2017年にソフトバンク・ビジョンファンドを設立した。こうした巨額の投資を続ける中で、孫正義氏はソフトバンクを世界的な企業へと成長させたのだった。 筆者が、孫正義氏にインタビューしたのは、2011年(PRESIDENT、2011年3月7日号)だった。 その時点で、メディアの個別取材にはあまり応じてもらえなくなってしまっていたのだが、粘り強い交渉(一方的に企画書を送り続けた)の結果、脳科学者の茂木健一郎氏に孫氏が人としての興味を持っているということを知り、茂木氏にお願いをして一緒にソフトバンクの本社(当時は汐留)へと向かったのだった。 孫氏は、ユニクロっぽい服を着て、ビジネスサンダル(一見、ビジネスシューズに見えなくもない黒いサンダル)で現れた。本当にファッションに興味がないんだなと驚いたものだった。インタビューでは、ソフトバンク社内での会議についての話になった。そこで孫氏はこんな話をしてくれた。
● 必ずオチをつける孫正義の会議 「ソフトバンクは、外から見ると僕がワンマンで相当にやっているように思われがちですけど、実態は意外と合議制なんですよ。僕の提案でも、きちんと納得できる反対意見なら歓迎ですから、若い連中もいいたい放題ワーワーやっています。CMの企画会議なども含めてすべて」 当時、ソフトバンクの「白戸家」のCM(「お父さん犬」の声優を北大路欣也氏が務め、長女役の上戸彩氏らが出演した)が話題になっていたので、CMの企画会議の話になったのだ。 創業者社長にありがちな独裁的な経営スタイルではなく、合議制というのには驚いたが、和気あいあいとした雰囲気で会議が進んでいたのであろうことは、他の参加者の証言からもよくわかる。以下は、現LINEヤフー会長の川邊健太郎氏が孫氏の会議についてイベントで話したものだ。 司会:ソフトバンクさんのようなところは、風土というより、孫(正義)さんのDNAがもう文化のレベルまで染み渡るという感じですか? 川邊健太郎(当時ヤフー副社長。現LINEヤフー会長):それはそうですよね。孫さんが一代で築いたというか手塩にかけて築いた考え方、チームの作り方、話の落とし方というか。孫さんって、会議が面白いんですよ。必ずオチをつけようとするんですね。 司会:落語みたいな感じですか? 川邊:そうです。考えなくてもいいのに、その場にいる人を楽しませようという精神が強いんですよね(笑)。 必ず話のオチをつけようとするので、皆でゲラゲラ笑うのですけれども、あれだけ笑いがある会議というのがまさに、ソフトバンクの企業文化なのではないでしょうか。(中略)普通、真面目な会議であんなにゲラゲラ笑わないですよ。Yahoo! JAPANなんて、全然笑わないですから。 司会:どこかで皆がメタ認知していて、孫さんだったら何と言うかなといった感じがもう染みついているっていう。 川邊:そうですね。この会議、孫さんだったらどうオチをつけるのかな、といった感じで、その前提に立って皆が行動しますよね。Yahoo! JAPANにはYahoo! JAPANの組織文化があって、文化がチームワークの全てだという可能性はありますよね。 (Industry Co-Creation『孫正義は会議で必ずオチをいれて笑いをとる』2017年5月9日) これは面白い証言だろう。同じソフトバンクグループでも、孫氏の出席する会議では笑いが絶えない雰囲気となり、ヤフーの会議では全く笑いが起きないという。2017年のヤフージャパンの社長は、宮坂学氏だ。会議を取り仕切るトップによって同じグループでも雰囲気がガラッと変わる。