「なあに、かえって免疫力がつく」ってホント? パリ五輪“セーヌ川・大腸菌問題”を例に内科医に大真面目に聞いた
■免疫の過剰評価は禁物、自分の持つ大腸菌が自分を攻撃することも
――ちなみに素朴な質問なのですが、曝露すると免疫がつくというところで…。大腸菌は誰しも持っているじゃないですか。自分の持つ大腸菌が自分を攻撃してくることはないのですか? 「あります。腸内の大腸菌は本来は無害な種類ですが、悪さをするシチュエーションとしては、腸の病気で内壁が弱くなっていたり傷があったら、そこから入って“膿瘍”という塊を作ったり、それが血液に入ってトラブルを起こしたりもします」 ――つまりは、自分の大腸菌だろうが外からだろうが、トラブルを起こすと。 「可能性はあります。自分の大腸菌だから免疫があるとか、それで常に大丈夫とは言えないです」 ──免疫を過剰評価してはいけない。 「その通りです。ただ、日本の方々が東南アジアなどで生水を飲むとお腹を壊すことがありますが、現地の方は大丈夫だったりするじゃないですか。そういう例があるので、“免疫の慣れ”もたしかにありますね」 ■免疫を獲得しても一生続くわけではない、腸活と免疫力の関係にも注目 ――仮に一度免疫を獲得しても、それが一生続くわけではないですよね? 「そうですね。例えばマイコプラズマ肺炎は、数年に一度感染が拡大します。これは流行により集団免疫ができますが、徐々に免疫は落ちていき、また数年後に感染するという周期。免疫はつくかもしれないけれど、しばらくしたら弱まるということも頭に入れておく必要があります」 ――コロナ禍で皆がマスク着用、アルコール消毒などを徹底していましたが、そうやってガードすることが有用である一方で、免疫が弱まるということもあるのですか? 「あるかもしれないですね。子どもたちは風邪を引くことは減りましたが、コロナが明けて、RSウイルスなどいつもと違うおかしな流行を見せたことがありました。現在、溶連菌感染が激増しているのも、コロナ禍が影響しているかもしれないです」 ――結論としては、免疫は確かに一部つくかもしれないけれど、過信して衛生的でない行いはしないようが良いと。 「もちろんそうです。鍛えられる、免疫がつく可能性はたしかにゼロではない。また昨今は腸と免疫の関係が注目され、腸活も注目されるようになりました。腸内細菌や腸と免疫の関係はまだまだ未知であり、今後さらに腸活と免疫力の関係が明らかになるかもしれません」 【監修者】 日本内科学会認定医。東京都済生会中央病院で研修後、同院にて糖尿病をはじめとした総合診療や医学教育に従事。現在は、若い世代の糖尿病など慢性疾患管理の向上などのため、質の高く、アクセスの良いプライマリーケアクリニックの実現や医療情報の提供を行っている。