第93回選抜高校野球 北海、あと一歩及ばず 熱投エース、延長力尽く /北海道
<センバツ高校野球> あと一歩、惜しかった――。第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は19日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕し、道代表の北海は開幕試合で神戸国際大付(兵庫)と対戦した。北海は序盤リードを奪ったが、延長十回にエース左腕・木村大成投手(3年)が力尽き、2―3で惜しくもサヨナラ負け。春夏の甲子園を合わせて大正、昭和、平成、令和の4元号での勝利は成らなかった。【三沢邦彦、金子昇太、野原寛史】 春の陽光が注がれた三塁側アルプス席は二回、この試合最初のビッグチャンスに沸いた。先頭の5番・林大海(3年)が中前打で出塁するなどして2死満塁となり、打席には身長169センチの1番・杉林蒼太(3年)が立った。 父亮輔さん(47)は「体は大きくないが、メンバーに選ばれた。チームに貢献し、初戦を突破してほしい」と見守り、兄拓夢さん(21)も「野球に関しては真面目。自分のためにプレーすることだけを考えて」と声援を送った。杉林は交代したばかりの相手投手の球を慎重に見極め四球を選び、押し出し。先制点を挙げると緑のメガホンが揺れた。 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、約4万7500人を収容できる阪神甲子園球場は1万人までの入場制限が設けられ、アルプス席でのブラスバンドの演奏も禁止された。しかし、学校関係者や創部120年を迎えた野球部のOBらが駆け付け、ナインを後押しした。 17年夏の甲子園で神戸国際大付と対戦した野球部OBの竹元拓海さん(21)=関西大3年=は「自分の甲子園はあっという間に終わってしまった。後輩には楽しんでプレーし、リベンジしてほしい」とエールを送った。 五回、先頭の3番・江口聡一郎(3年)が右翼線に鋭い打球を放ち、二塁に到達。4番・宮下朝陽主将(3年)が三振に倒れた後、林の中越え二塁打でホームに還り、2点をリード。母晴美さん(47)は「この場所に連れて来てもらえただけでもうれしいのに、ヒットも打ってくれてよかった」と笑顔を見せた。 一方、木村投手は五回までに6三振を奪うなど相手打線につけ入る隙(すき)を与えない好投。父健一さん(52)は「緊張しながらも、しっかり投げて試合をつくってくれている。後半も今の調子を維持して、思い切りプレーしてほしい」。 しかし終盤、神戸国際大付に試合の流れが傾き始める。六回2死一、三塁のピンチ。相手打者が放った打球は二塁手後方にふらふらっと上がり、打ち取ったかに見えたが、関虎大朗中堅手(3年)の前にぽとりと落ち、1点差に迫られた。 さらに九回1死一、三塁、相手打者がスクイズを試みた場面。木村投手のワンバウンド投球を大津綾也捕手(3年)が体で止めたが、わずかに左側に転がり、三塁走者が大津捕手のダイビングタッチをかわしホームイン。同点に追いつかれた。 そして2―2で迎えた延長十回、投球数140球を超えた木村投手が死球を与えるなどして1死満塁のピンチ。内野手が前進シフトを敷きバックホーム体制をとる中、相手打者が放ったゴロは木村投手の右側をすり抜けた。小原海月(みつき)二塁手(2年)が懸命に飛びつくも届かず、白球は芝生の上を転がった。木村投手はしゃがみ込み大きく息を吐いた。 木村投手をリードした大津捕手は7日の練習試合で右足首を負傷し、17日から全体練習に参加したばかり。万全とは言えない状況で最後まで懸命にプレーした。母由香さん(43)は「試合は残念な結果だったが、選手は甲子園を経験したことでぐっと強くなると思う。夏の大会でまた甲子園に連れてきてほしい」と話し、拍手を送った。 ◇「最後の一球まで」 ○…ベンチ入りできなかったメンバーは、アルプス席で緑のメガホンをたたき、仲間を後押し。近藤楓(ふう)さん(2年)は「声も出せず、もどかしい時もあるが、精いっぱい応援したい」。酒井智輝さん(3年)は「最後の一球まで全力でプレーしてほしい」と太鼓を響かせた。試合は惜しくも敗退。スタンドに駆け寄り、頭を下げる選手たちに温かい拍手を送った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇父と兄の「夢」背負い 杉林蒼太選手(3年) 「父と兄の思いを背負ってプレーしたい」。攻撃の起点となるリードオフマンは、夢舞台を前にこう語っていた。 父亮輔さん(47)はかつて北海の野球部員で、札幌学院大3年の兄拓夢さん(21)も北海野球部OBという野球一家に育った。小学2年で野球を始め、父が監督をしていた石狩市の少年野球チームで基礎を学び、北海に進んだ。父、兄ともに現役当時、チームは甲子園に出場した。しかし、ベンチに入ることはできず、いつしか「夢」を託された。 昨秋の全道大会は、準々決勝から1番となり、10年ぶりの優勝に貢献。大会前の練習試合では、10試合中9試合で1番打者として出場。打率3割4分2厘で9四球を選び「自分が出塁することで相手に圧力をかけたい」と意気込んでいた。 「楽しんで全力でプレーしてほしい」。父からこう声を掛けられ臨んだ一戦。「雰囲気を楽しむことができた」。だが、二回2死満塁から四球を選び先制点に貢献しつつも、バットから快音は聞かれなかった。「最後まで相手投手に対応できなかった」と唇をかみしめ、躍進を誓った。「レベルアップして、夏の甲子園で借りを返したい」【三沢邦彦】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦 北海 0100100000=2 0000010011=3 神戸国際大付 (延長十回、十回からタイブレーク)