トップ10のうち4銘柄を占める「S&P500」連動型ファンドがトップに=ネット証券の投信積立契約件数ランキング24年7月
今後の展望を考えても、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の構成国の割合で、新興国の比率は10%程度に過ぎず、米国が63.5%を占めているという実態を考えれば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の変動に占める米国株式の影響度合いは非常に大きい。また、米国経済の変調は先進国や新興国にも影響を与えることは間違いない。それほど、米国株式が与える影響が大きいのであれば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の持つ分散投資効果は、さほど効果的と言えないのかもしれない。そして、「S&P500」インデックスファンドにパフォーマンスが大きく劣後するのであれば、あえて「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を選ぶメリットはどこにあるのだろうかと疑問に思えてきても仕方がないような結果だ。
前月までは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」がトップだったため、1カ月だけの順位の入れ替えで断定することはできないが、積立投資対象としての「S&P500」の魅力に、多くの投資家が気が付いてきたのではないだろうか。それが、今月のランキング結果には読み取れるようだ。
一方で、8月に入って米国経済の先行きに対して不透明感が増してきている。米FRB議長が9月の利下げの可能性について言及するほど、米国のインフレは落ち着き、また、インフレ要因である人手不足による賃金高騰という状態も落ち着いてきている。そして、8月1日に発表された米7月ISM製造業PMIは46.8と前月の48.5や予想を下回る悪化となり、また、新規失業保険申請件数は24.9万件と予想の23.6万件を上回る規模となり、また、継続失業保険受給総数は187.7万件と2021年11月以来の水準に悪化している。購買担当者の先行きの景気見通しが悪化し、失業者も増えてきているという実態が示され、これによって米国の景気後退(リセッション)が接近しているという見方が強化された。
「S&P500」は7月10日に終値ベースでの最高値5633.91ポイントを記録した後は弱く、8月1日には前日比1.37%下落して5446.68ポイントになった。高値からの下落率は、まだ3%程度であるが、8月2日に日経平均株価がリーマンショック以来の株価の下げ幅(2216円安)を記録するなど波乱含みであり、今後は慎重に見ていく必要がでてきた。7月に米国株価が史上最高値を更新したことなどを映して「S&P500」連動インデックスファンドが大人気になったところだが、今後、株価の変調を受けて、人気銘柄にどのような変化が起きてくるのだろうか。今後の変化に注目していきたい。
ウエルスアドバイザー