鈴木彩艶が愛される理由 イタリア人記者が明かすパルマでの生活とレジェンドGKの称賛
正直に言うと、鈴木彩艶の加入時、パルマは「不信」という名の空気に包まれていた。「不信」という表現が強すぎるなら「慎重」、もしくは「疑問」と言ってもいい。 【画像】日本代表 2026年のメンバーはこうなる! 識者が予想 この空気は、クラブ側が醸し出したものではない。それどころかパルマ自体は、彼の獲得に、はっきりとした自信と明確な目論見を持っていたと言えよう。だからこそ年俸(ボーナスを含む)1000万ユーロ(約16億円)を支払うことを決めたのだ。ただし、ほかの選手に比べると、かなり控えめなムードのなかで迎えられたのは確かだ。「〇〇がやってきた!」といったような、到着を待ちわびる騒ぎはなかった。 それは決して彼が日本人だからではない。初の日本人プレーヤー、三浦知良がジェノアに来てからほぼ30年、イタリアサッカー界は日本人選手を評価することを学んできた。おそらく、パルマの人々が彩艶を戸惑いの目で見たのは「日本人」と「GK」という、イタリア人には見慣れない組み合わせに原因があったのだろう。 この夏に加入が決まってから、最も多く聞かれたサポーターの声をまとめると、こうなる。 「GKとは最もデリケートなポジションだ。それをなぜ、わざわざイタリアサッカーの"水"以外で育った選手に任せるのか?」 それから数カ月がたった今、彩艶を取り巻く空気は、完全に変わった。彼は試合を重ねるたびにパルマの人々の信頼を勝ち取っていった。なぜなら、彼には掛け値なく才能があることを、誰もが理解したからだ。 なかでも人々が高く評価したのは、的確に守備陣を統率する才能、ゴール内での反応のよさ、そして何よりその勇敢さだった。必要ならば、ゴールマウスから飛び出すことも辞さない。もちろん、ミスもある。だが、それは彼の年齢と、初めてトップリーグでプレーするという事実を考えれば、当たり前のことだ。 ナポリ戦(8月31日)での退場は、多少、彼のイメージダウンにつながった。だが、たとえば今月のラツィオ戦(12月1日)では、ピッチ上で最高のパフォーマンスを見せた選手のひとりだった。また、昨シーズンのチャンピオン、インテルとの対決(12月6日)にパルマは1-3で敗れたが、ラウタロ・マルティネスに対するセーブは見事だった。彼がいなかったら、もっと大差をつけられていたろう。 パルマのファビオ・ペッキア監督は公の場で、何度も彩艶を称賛している。彼は彩艶を、チームを率いる存在であると見ているのだ。