世界最大の乾燥機は新幹線1両分 災害備蓄でも注目、フリーズドライ工場に単独取材㊤
お湯を注ぐだけで温かいみそ汁やスープが作れるフリーズドライ製品。食卓の強い味方であるだけでなく、近年では災害時の備蓄食としても注目されている。「アマノフーズ」のブランドでフリーズドライみそ汁市場1位を誇るアサヒグループ食品の岡山工場に、全国紙として初めて単独取材に入った。世界最大級のフリーズドライ機など、工場内にはトップシェアを支える秘密や、企業努力が隠されていた。 【写真】最初に具材と調味液を入れて混ぜ合わせ、みそ汁を作る ■まずは「おいしいみそ汁作り」 広島県福山市と岡山県倉敷市の中間に位置する同県里庄町。中国山地の豊かな自然と住宅地が共存する、のどかな雰囲気の街に、アマノフーズの工場はある。 担当者からレクチャーを受け、まず全身を徹底的に衛生服で覆う。頭巾のすそを上着の中に入れ、上着のすそはズボンの中に。粘着式クリーナーを全身にかけ、さらに個室で10秒間、風圧を浴びてほこりを飛ばす。 ようやく工場内に入ると、ふわりとみその香りが漂ってきた。最初の工程はみそ汁作り。「ニーダー」と呼ばれる長辺2メートルの四角い金属製の大鍋に具材と調味液を入れ、機械でかき混ぜる。1回1千リットル、2万食分。乾燥前に具材と調味液を混ぜ、味をなじませる。 この段階でいかにおいしいみそ汁を作るかが、最初のポイントだ。具材は旬を味わえるよう、産地にこだわる。ネギはそのまま投入するが、ナスは手で詰めるなど食材によって工程を変える。みそも数種類をブレンドし、具材によって使い分ける。 ■天井に張り巡らされたレールで… できあがった大量のみそ汁は、パイプを通って充填(じゅうてん)の工程に移る。フリーズドライ製品は衝撃で割れやすいが、割れてしまうと作り立ての風味が損なわれるため、一つ一つ、プラスチックトレイに入れられる。 10列に並んだトレイがベルトコンベヤーで運ばれ、そこへパイプからみそ汁が1食分ずつ流し込まれる。無数のトレイに入ったみそ汁は、高さ3メートルほどの「トロリー」と呼ばれる大きな棚で、天井のレールからつるされて運ばれる。 レールは工場内の天井に張り巡らされており、次に向かうのは凍結庫だ。中はマイナス25~30度。ここで8~10時間かけて、徐々に凍らせる。