日経が最終版の宅配エリアを縮小、スクープの載らない紙面に価値はあるのか
筆者の自宅がある東京都の多摩地域東部で、今月の11日ころから日本経済新聞の最終版が宅配されなくなった。最終版は「14版」と呼ばれ、重要なスクープが掲載される、いわば「その日の新聞の完成形」だ。私にとって重要情報が宅配されなくなったということは、読者サービスの後退なのだが、同社はそう考えていないらしい。本来、都心部では、最終版が宅配しやすい地域であるだけでなく、都心への通勤者も多く、最終版である必要性が高い。にもかかわらず、なぜ、最終版が配られなくなったのだろうか。
新聞紙面の「版」とは何か
日本各地で配られる新聞は、印刷開始時間によって異なる紙面が作られていることご存知だろうか。民放の朝の情報番組では、新聞を題材にニュースを紹介するコーナーがある。そういった番組を見ていると、「なぜ、うちに届く新聞とテレビで映っている新聞は同じ新聞でも違うのか」と思う人もいるだろう。その秘密は、「版」にある。 新聞は、一般的には印刷工場から遠い販売店に送る紙面は早い時間に印刷を開始し、近い販売店に送るものは遅い時間に印刷を開始する。朝日・毎日・読売といった一般の新聞では、朝刊は12版、13版、14版と3つにわけられている。日本経済新聞は、11版もある。東京本社版の14版は東京23区や多摩地域の一部、横浜市、川崎市に配られ、数字が大きくなればなるほど、新しい情報が掲載されている。それに合わせ、新聞社は紙面の締め切りを設定する。 新聞社は、印刷が開始されるまでの最新の情報をそれぞれの「版」に盛り込み、印刷工場で印刷し、トラックで販売店まで運び、宅配する。最近では郊外や地方に印刷工場を分散して設置する新聞社も多い。東京では社屋内で印刷している新聞社は朝日新聞社だけである。 以前は、新聞各社は、最終版にのみスクープを掲載するということも多かったが、最近は早い版からスクープ記事を掲載するようになっている。しかし、日本経済新聞だけは、大きなスクープは最終版にのみ掲載するようにしている。 だから、新聞の最終版が都心部への通勤者の多い多摩地域で宅配されなくなったということは、とても影響が大きい。日経新聞が持つ最大の価値であるスクープ記事や最新の情報といった、ビジネスマンに必要な重要情報が届かなくなったということを意味するからだ。