日経が最終版の宅配エリアを縮小、スクープの載らない紙面に価値はあるのか
日経が14版から13版に移行した理由
日本経済新聞社に「なぜ多摩地域の多くを14版から13版へと移行したのか」と問い合わせると、広報室から次のような答えが返ってきた。 「新聞販売店への輸送遅れが原因で新聞配達の遅延や不備が生じないよう、交通事情や販売店の配達体制に応じて新聞製作上の版の見直しをしています。当社は他社の配達網に委託しているケースが多いため、他社の配達時間変更なども考慮しながら配達体制を組んでいます」。 つまり、日本経済新聞以外の新聞を中心に販売している販売店(合売店や複合店と呼ばれる)の配達体制に迷惑をかけないように、日本経済新聞を早く到着させたいということだ。加えて、同社は「早朝出勤に伴い、配達時間を早めてほしいという読者ニーズも高まっている」といい、配送トラックの台数を増やすなど輸送体制の強化を図っているともいう。 筆者の家に新聞が届くのは朝4時30分から、5時30分の間くらいだ。朝3時には配達を開始していると思われる。いまでも、十分に早い。最終版をできるだけ広い範囲に宅配するよりも、配達する時間を早めることが、読者サービスにつながっているという判断なのだろう。
日本経済新聞の14版と13版の違いはなにか?
日本経済新聞は、14版が特別な重みを持つ新聞である。まず、大きな見出しを掲げるようなスクープ記事は14版にしか掲載されない。企業の合併など、同紙が独自に掘り起こしたスクープ記事は、原則として最終版に掲載される。最終版のトップを飾った記事の中には、新聞協会賞を受賞したものもある。 14版のスクープ記事が、経済を動かし、株価を動かす。スクープが出た当日朝、企業は合併を否定するプレスリリースを流す。そして午後、株式市場が終わったころに記者会見を行い、合併の事実を認めるということは、何度も繰り返されてきた。 経済分野でのスクープをほぼ独占的に行える同紙の最終版は、価値が高い。地方の新聞社に印刷を委託しているようなところでも、最終版を印刷しているところは多い。いや、海外で印刷しているものも、他紙は早い版のものであるのに対し、同紙は最終版をもとにしたものを印刷している。それだけ、日本経済新聞の最終版の価値は高いのだ。