「もうすぐ拘置所へ送られる」...恐ろしいロシア政府に拘束された女性と離れ離れになった娘の《奇跡の再会》
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第42回 『「裁判官」も「捜査官」も“ロシア政府”には逆らえない…違法逮捕された女性記者が見た連邦刑執行庁の「本当の顔」』より続く
耐えがたい自宅軟禁の日々
毎日、貴重な時間を失っていると考えると苦しかった。たぶん、もうすぐわたしは拘置所へ送られる。そうなれば娘と会える機会は本当になくなってしまう。最低5年か、もし権力が見せしめ裁判をする気なら、それ以上を獄中で過ごすだろう。 出所する頃には、アリーナはもう大人になって、高校も終え、大学入学の準備をしているだろう。時間は流れて行く。行動しなければならなかった。しかしわたしは無力で、気力も萎えていた。わたしはこうしたつらい思いから抜け出そうとしたが、涙がこみあげてくるのは抑えられなかった。 「悩むことはありません。大丈夫」 クリスティーナが元気づけてくれた。 「絶対に何とかします。アリーナのお父さんは、わたしと連絡することも禁止しました。アリーナはわたしにこっそり、とても寂しい、家に帰りたいとメッセージを送ってきました」 わたしも寂しかった。自宅軟禁の日々は耐えがたいほど緩慢に流れて行った。夏休みは終わろうとしていた。あと少しで学校が始まる。それなのにわたしは、4方を壁に囲まれ、ポツンと一人だった。