「死ぬまで働く。それが本望」101歳の現役自転車職人、生きがいは“仕事後の一杯” 年金受け取りながら働くシニア世代の現実
101歳の現役自転車職人
一方、東京・墨田区の鐘ヶ淵では、101歳で働くシニアがいるということで、地元の人に話を聞くとーー。 60代: 自転車屋さん。すごいなと思いますけど。 77歳: 知ってます。昔から知ってます。すごいと思うよ100歳まで。 そんなベテラン自転車職人として地元の人に知られるシニアは、101歳の石井誠一さんだ。 石井さんは1922年5月、東京・神田の生まれで、14歳の頃に自転車屋さんで修業をはじめた。 27歳でお見合い結婚をして2人の子供をもうけた後、29歳で自分の店を開業して以来、地元で自転車職人を続ける大ベテランだ。33年前、奥さんが亡くなった後も店を続けてきたという。 朝型の石井さんは、午前4時には目が覚める。その後、朝8時に店を開けて、朝食を食べるのが日課だ。朝食を摂る姿は、ごく普通の“おじいちゃん”といった様子で働く姿を想像させない。 午後3時半頃、近所の人が自転車を抱えてやってくると、石井さんの表情が変わった。 石井誠一さん(101歳): どうしたの? お客: 前(タイヤのパンク)できる? 石井誠一さん: できる?って商売だもん、できるよ。 依頼はタイヤのパンク修理。石井さんは自信に満ち溢れた様子で、自転車を軽々と持ち上げ、女性に20~30分で引き取りにくるように伝えた。 石井誠一さん: 俺に向かって「直せる?」なんてふざけたこと言ってるな。直せるに決まってるじゃねえか。
101歳が85年ぶりに“大技”
何十年も経験を積んだ職人にとっては、パンク修理は朝飯前だ。石井さんは手に馴染んだ工具を握り、手早く修理を進める。しかし、作業を進めていくとパンクの深刻な原因が明らかになった。 石井誠一さん: 「嫌だ。こんなところ(穴)開いてるよ。うぇ!」 ーーここだと(穴ふさぐ)パッチが貼りづらい? 石井誠一さん: 貼れませんこれ。貼ったって、すぐ剥がれちゃう。こっちが固い、こっちが柔らかい。すぐ剥がれちゃう。 穴が開いている部分は、チューブに空気を入れる入口付近の境目。境界部分の素材の硬さが異なり、パッチを貼って穴を塞ぐという一般的な修理では直せないという。 さらに、同じ規格の交換用チューブは在庫切れで、チューブ自体の変更もできない。石井さんは明後日のほうを見つめ、途方に暮れた様子だ。 しかし、石井さんはそこで諦めなかった。 思いついたように立ち上がると、サイズの異なる別のチューブを取り出し、チューブの同士の長さを合わせると、次の瞬間に思い切りよく切断した。切ったチューブをタイヤのサイズに合わせて繋ぐというのだ。 石井誠一さん: 85年ぶりだよ。昔はこれをよくやったんだよ。今のやつは知らねえ、こんなことは。“芋継ぎ”って言うんだよ、今こんなことやってるのいないよ。小僧時分(修業時代)に教わった。小僧時分。へへへ。 得意げに語る石井さんの手に迷いはなく、一つ一つの作業を丁寧に進めていく。 チューブにパイプをはめてゴムのりを塗り、パイプを外してひっくり返すと完成だ。 1時間以上かかったものの、水に沈めても空気漏れの様子はなかった。きれいに繋がる一本のチューブは、まさに101歳の年の功だからこそ成しえる職人技だ。