4シーズンぶりに1部復帰の帝京大、「一戦必勝」で臨むリーグ戦で4連勝
昨年の夏にカットボールを覚えたことで、投球の幅が広がったそうだ。「日体大は初球からどんどん振ってくるチーム。たぶんカットボールを狙われていたんですけど、ゴロアウトを取ることができました。カットボールは狙って投げているところから縦にも横にも適当に散らばるので、自分でもどう曲がるかわからないんです」。 さらに、冬の間は肩周りのインナーマッスルを鍛えた。「肩周りが柔らかくて、投げるときに胸が遅れて腕がついてこないので、投げたいところに投げ切れていませんでした。リリースポイントまで持ってこられるように鍛えました」。その結果、ストレートが低めに決まるようになり、カットボールのスピードが少し上がった。 ふたりとも、確実にレベルアップしてこの春を迎えていた。
大学野球の神髄とは、を考えさせる帝京野球
唐澤監督は、今年のチームを「目立った選手はいないけど、とにかく全員でやろうというまとまりのあるチーム」だと話す。そういうチームだからこそ考えられた、ひとつの戦略がある。それが「捕手ふたり制」だ。 帝京大には、ここ数年だけ見ても塚畝(つかうね) 捕手、後藤将太捕手(現JFE西日本)、大友宗捕手(現茨城アストロプラネッツ)など、毎年のように力のある正捕手がいた。今季、ここまでの4試合では、榮が先発のときは池田竜己捕手(3年・宇部鴻城)、松尾が先発のときは奥宣孝捕手(4年・富山国際大付)がマスクをかぶっている。 「本当は、シーズン通してマスクをかぶり続ける正捕手がいないといけないですよね。でも今年はキャッチャーも野手もそうですが、控えにも遜色ないように練習をさせています。それで、1戦、2戦と同じキャッチャーがマスクをかぶると傾向が出るじゃないですか。カウント別でどういう球種を投げるかは、キャッチャーによって偏りやすいので。齋藤ピッチングコーチにも相談したんですけど、池田のパターンと奥のパターンでリードが変わると、今の段階では相手が考えてくれるかなと。ふたりは性格がまったく違うので」 「控えにも遜色ないように練習をさせる」ことは、もうひとつの戦略にもつながる。「ベストメンバーで戦えないときに、誰か次の選手が出てきて欲しいというのが監督としてあります。何年生であっても、誰が出てもおかしくないチームにしたいと思っています」。 ただ、やはり期待しているのは4年生だ。4年生がこれまで積み重ねてきたことを試合で存分に発揮して試合展開に余裕を持たせてくれると、下級生の出場機会も増える。 「キャプテンの今﨑中心に、本当に4年生が頑張っています。競っているときには難しいので、4年生がいい場面を作ってくれたら1年生も出せる。失敗してもいいから一回経験するとその後に生きてくると思いますし、周りにもいい刺激になるのではないかなと思います」 集大成と育成、チーム全体での凡事徹底と個人のレベルアップ、選手たちが指揮官の教えを理解し理想的な状態にあるのが、今の帝京大なのではないだろうか。 自身は5打数4安打と活躍してチームが4連勝した直後にも関わらず、彦坂は落ち着いたトーンでこう言っていた。「今は、いい感じにいっているだけだと思います。絶対にどこかで苦しい場面がやってくると思うので、そこを乗り越えてこそ優勝が見えてくると思います。今の結果に満足せずに、もっと接戦を勝ち切れるようなチームを作ってきたいと思います」。 勝って兜の緒を締めよ。次の相手は同じく開幕から4連勝の東海大だ。チームの足並みをそろえて、この山を越える。
取材・文・写真 山本祐香