東京のホテル高騰化はやりすぎ? 1泊4000円で経営のオーナー絶句「高すぎる印象」
変わらないホテルのサービスや付加価値
インバウンド(訪日外国人客)増加による影響が日本の各地に飛び火している。東京都内ではホテル宿泊費が高騰し、出張などで訪れる日本人のビジネスマンから悲鳴が上がる。一方で、都内には1泊4000円で営業している宿もある。宿泊費の高騰についてどのように受け止めているのか、詳しい話を聞いた。(取材・文=水沼一夫) 【動画】「ウソやろ。マジか」と驚愕 25億円のうめきたタワーマンションの内装 「東京は1万円じゃ泊まれないって聞いていたのでびっくりしましたね。検索かけたらこんな数字が出てきて……。各社考え方が違うなって思います」 こう話すのは、東京・台東区の「カンガルーホテル」のオーナー、小菅文雄さんだ。日雇い労働者の街として知られる山谷地区にあり、「このあたりだと高い部類に入ります」という宿泊費は洋室シングルで1泊4000円。時期によって、3600円~5000円の間で価格は変動している。 取材した12月下旬、小菅さんが見せてくれたのは、浅草周辺のホテルのコロナ禍前からの価格推移だ。 インターネットの検索をもとに、全国展開する大手チェーンA社、同じく有名チェーンのB社、カンガルーホテルの3社を比較したが、A社の価格は1泊1万4000円に達していた。 「高すぎる印象はあります。究極、人が寝るだけですからね」 宿泊費の高騰は度を超えているとの見方を示した。 11月に日本を訪れた外国人旅行者は318万7000人で過去最高を更新。渋谷を始め、都内の有名観光エリアはどこも外国人でいっぱいだ。これに勢いづくのが宿泊業界で、都内のホテルが加盟する東京ホテル会の発表によれば、11月の平均客室単価は初めて2万円の大台を超えた。 「2024年は訪日数が過去最高を記録しているので、稼働率は100%に近い数字。全国的にも90%を超えているので、どこもそうなのかなと思います」(小菅さん) 年間を通じて32部屋の客室が埋まる盛況ぶり。「一番多いのは中国、韓国。11月ぐらいまではドイツも多かったです。東南アジアも増えている。フィリピンのお客さんも多い」。日本は長らく経済が低迷し、通貨の価値が落ちて円安が加速。その間、海外では賃金が上昇し、“物価の安い”日本は「旅行しやすい国」の一つになっている。 インバウンドの恩恵を最大限得るのであれば、さらに価格を上げることは可能だ。 ただ、小菅さんは「宿泊代を上げてもお客さんは入るだろうなと思います。でも、うちはそういう目的でやっていない。リーズナブルに若い人に提供したい」と説明。「ここで抑えるのは良心。また色気を出すと、世の中何があるか分からないですから」と手綱を引いた。 コロナ禍で宿泊業界は客の減少で大きな打撃を受け、ひん死の状態に陥った。 特に浅草周辺では、ゲストハウスやドミトリーと呼ばれるリーズナブルな宿泊先が相次いで廃業した。もともと経営体力に乏しく、さらに大手が軒並み価格を下げてきたため、競争が激化。「コロナによって夢破れてみんな辞めちゃった。浅草あたりでは1泊3000円朝食付きプランもあった。そういうのは全部なくなりましたね」。現在ホテルの高騰化が進み、宿探しが難しくなっている背景には、ゲストハウスのような安宿の減少も一因にあると指摘する。 「世の中、高騰、高騰って言われていますけど、それはあるクラス以上のホテルかなと考えています」 これからも創業本来の目的を見失わず、地に足をつけた営業を続けるつもりだ。