不思議と涙を誘われる「漫画家・矢部太郎さん初の大規模展覧会」
お笑い芸人であり漫画家の矢部太郎さんによる初の大規模展覧会「ふたり 矢部太郎展」が、東京・立川のPLAY! MUSEUMで開催中です。会期は2024年7月7日(日)まで。代表作から最新作まで、矢部さんの作品が様々な方法で展示されています。 大人気フィクション『大家さんと僕』(新潮社)からは、来場者が作品の一部になれるインスタレーション体験に加え、展覧会のためにアクリル絵の具で制作した約100点の描き下ろし作品も用意。 さらに、矢部さんが子ども時代を過ごした東村山の暮らしを感じられる映像コーナー。矢部さんの父であり、絵本・紙芝居作家のやべみつのりさんが家族絵日記として綴った「たろうノート」の現物展示などもあり、矢部さんご自身の半生に迫る内容にもなっています。 開催前日にはメディアに向けた内覧会が開かれ、矢部太郎さん、PLAY! MUSEUMプロデューサーの草刈大介さん、空間・ビジュアルデザインを手がけた樋笠彰子さんによるギャラリートークが行われました。その模様をお届けします。
展覧会に至る“思わぬきっかけ”
立川のPLAY! MUSEUMでの漫画の展示は、2022年に行われたさくらももこさんの「コジコジ万博」に続く2回目。今回の矢部太郎展に至るきっかけには、意外なエピソードがあったとか。 「コジコジ万博に大きな反響があって、漫画の新しい楽しみ方を提案することに可能性を感じていました。またいつか漫画の展示を企画したいと考えていたタイミングで、ちょうど矢部太郎さんがお忍びで来てたんですよね。その日、矢部さんが受付で荷物をバッと落とされたみたいで、その中の領収書に"矢部太郎"って書いてあるのをスタッフが目にとめて...笑」(草刈さん) コジコジが元々お好きだったという矢部さん。展覧会への来場について「お忍びじゃない」と恥ずかしそうに否定して会場に笑いを誘いました。 「誰もが生きづらさを感じるような時代に、矢部さんの描く漫画が支持されていることを本とは違う形でPLAY! MUSEUMで紹介したいと思いお声がけしました。 『大家さんと僕』が2017年に出て、初版が6000部だったんですよね。その6000部が、いまや120万部になりました。どうして120万部までいったのか新潮社の担当編集の方に聞いたら、"みんなが応援してくれたから"と言っていました。書店員の方や、読者の口コミで広がる作品なんだなと、それを聞いてすごい納得がいって。だからこの展覧会も、来場者一人ひとりの応援から広がっていけばいいなと」(草刈さん) また、漫画を展覧会に落とし込んでいく上で、プロジェクトの序盤からデザインに携わったアートディレクターの樋笠彰子さんは「子どもの頃、テレビを通じて好きだった矢部太郎さんの初の大規模展覧会に携われて、本当にうれしかった」とご自身の想いを話しました。