(写真協力『高校サッカー年鑑』)(Koki NAGAHAMA/GEKISAKA)

[1.6 選手権準決勝 市立船橋高 1-1(PK2-4)青森山田高 国立] 　これまで公式戦で蹴ったPKは、失敗したことがなかった。夏のインターハイで蹴った時は緊張から足に震えたというが、今回はそれもなかった。「自信はあった」。しかしMF岡部タリクカナイ颯斗(2年)が蹴ったPKは、相手GK鈴木将永(3年)に止められてしまった。 　選手権期間中も練習の最後にPK練習をするのが日課になっていた。前日に行ったPKは、GKギマラエス・ニコラス(2年)に止められていたというが、「昨日止められたから今日は大丈夫だろう」と前向きに、そしてキッカー指名を意気に感じて、PK戦に臨んでいた。 　それでも無意識のうちに、体は緊張感に縛られていたようだ。走り出したときはいつものように左に蹴ろうとしたが、蹴る直前に右に蹴る判断をしてしまったという。「体が勝手に。自分でも何で右に蹴ったか分からない」。守護神が止めてタイに戻した直後の後攻4人目での失敗。市立船橋高(千葉)はその直後のPKを決められて、4強での敗退が決まった。 「ロッカーではどうしていいか分からないくらい泣いた。謝っても謝ってもこの状況は変わらないと分かっているけど、謝ることしか出来なかった。3年生からは優しい言葉をかけて貰ったけど、優しい言葉をかけてもらえばもらうほど、涙が出てきた。3年生やBチームの人、3年生の保護者に申し訳ない気持ちでいっぱいです」 　卒業後に清水への入団を決めるFW郡司璃来(3年)や主将MF太田隼剛(3年)、DF佐藤凛音(3年)ら世代屈指のタレントを擁した今年度のチームでも日本一に届かなかったのかという思いが強いという。それでも恩に報いるためにも、前を向いていくしかない。 「自分たちの代は今年に比べて力もないですし、タレントもいない。今年これだけのメンバーがいて優勝できないということは、それだけ日本一は難しいことなんだと思う。練習から必死にボールを追いかけないといけないことは分かっている。自分がチームを引っ張る立場になると思うけど、選手権の悔しさは選手権でしか晴らせないと思っています」 　CBでの出場など、全国の舞台での経験はかけがえのないものになった。「口では簡単に言えるかもしれないけど、本当に死ぬ気で練習して、ここに帰ってくる。借りを返すと3年生と約束したので、必ず帰ってきたいです」。この冬の経験を糧に、個人としても注目選手になってみせる。