三日月大造・滋賀県知事に聞く「人口減少肯定的に受け入れたい」(全文2)
昨年10月に総務省が発表した平成27年の国勢調査確定値で、大正9(1920)年の調査開始以来、人口減少に転じた日本。このまま人口が減り続けた場合、自治体としての機能を果たせない地域が出てくると危惧されています。そうした中、人口減少が進む地方の首長は、どのようなビジョンを持ち、政策を行っているのでしょう。 首長インタビューの第1回は、2014年に48年ぶりに人口減少に転じた滋賀県の三日月大造知事に話を聞きました。(インタビューは2016年12月に実施)
何もしなければ50年後には人口が30万人近く減る
──県の将来の計画でいくと、2060年には減少を食い止めて129万とする戦略として掲げている。やらなかったとしたら113万人。なぜ113万人では駄目なのか。 僕は、人口が減るっていうことは避けられないので、おっしゃった通り、何もしなかったら110万人台になるということもむしろ肯定的に受け入れて、滋賀県作りをするべきだと思っています。じゃあなぜ、この人口減少対策、地方創生戦略に取り組むのかっていうことなんですけれども、この取り組みをすることで、私たちの県には、私たちの村には、私たちの地域には、こんないいところがあるよねっていうことを、私たち自身が改めて学び直したり、見直したり。それをただ知っているだけじゃなくて、例えば加工して、子供にも伝えようとか、せっかく来てくれている学生さんにも伝えようとか、そういう取り組みにつながっています。 だからこそ、僕はそこに意味があると思っていて。自分たちの住んでいる場所だとか、ご縁があって共に働いている場所を、いいところを学び、それを磨き、伝えていく、そういう取り組みにこの総合戦略を使っています。ですから、人口減少そのものは110万人であれ、120万人であれ、僕はむしろ肯定的に受け入れて。だからこそ、その限りある人生を豊かに暮らせるような、そういう滋賀県を作っていきたいと思っています。事実、僕たちが生まれた時は80万人だったり90万人だったわけですから。それでも豊かだったし元気だったし。人口が減ってもそれぞれの地域で豊かに暮らしていけるような、そんな滋賀県を作っていきたいなと思っています。 ただ、根底にあるのは、未曾有なので。不可避だけれども未曾有で、今まで経験したことがないので。そういうものに対する漠然とした恐怖感だったり不安感っていうものが、日本全国にあるのかもしれません。今までずっと増えてきたけれども、減りだした。学校がなくなる、若い人がいなくなる、俺たちの村どうなるんだろう、私たちの将来どうなるんだろうっていうことに漠然とした不安を持つ人たちが多いので、そういうものに対するポジティブなプラスのメッセージっていうことを発していくのも、僕たちの重要な役割かなと思いながら、今、取り組みをしています。 ──計画はあるけれども、113万人になったらもう滋賀は終わりというわけではなく、減らないようにやること自体がプラスのエネルギー。 僕はそう考えています。目標を持って、そして滋賀の何を磨こうかっていうことを皆で考えて。ないものねだりをするのではなくて、あるものを活かして、さあ、どうやったら人に来てもらえるんだろう、住んでもらえるんだろうっていうのを考えるプロセスっていうのは極めて意味のあるプロセスだと思っていて、このプロセスにこそ意味がある。僕はあると思うな。