イングランド英雄の監督人生“ラストチャンス” 日本人MF起用にも影響…“疑問”払拭への挑戦【現地発コラム】
かつての名選手も監督としての実力は「疑問符が付く」
1人は、まだ若いがBBCスポーツのシニア・レポーターを務める、“ニズ”ことニザール・キンセラ記者。「そう言われればそうだ」と切り出した彼は、筆者と同じく、コベントリーでの失敗は許されないという見方をしていた。 「イングランドでの評判は芳しくないんじゃないかな。選手としての過去は輝かしいままだけど、監督としてのランパードには疑問符が付く。名選手が名監督になるとは限らない。ウェイン・ルーニー(現プリマス)や、スティーブン・ジェラード(現アル・イテファク)も、監督キャリアの軌道修正に取り組む羽目になっている。ランパードにも、コベントリーでの成功が必要だろう。 チャンピオンシップでは、ダービーでまずまずだったから上手くいく可能性はある。若手が多い戦力的にも、ある程度は補強予算のある資金力面も、プレーオフ進出が最低線と思われる目標レベルも、当時のダービーと環境が似ているよ。今回は昇格実現という、もう一越えが必須。でなければ、国内で次の仕事を探すのは難しいと思う。ランパードのような人物が、3部以下までレベルを落とすとも思えないし」 2018年に監督初挑戦の舞台となったダービーでは、リーグ6位でプレーオフ出場権をもたらしている。ただし、その順位自体は前シーズンからの横ばい。若い主力には、チェルシーからのメイソン・マウント(現マンチェスター・ユナイテッド)とフィカヨ・トモリ(現ACミラン)、リバプールからのハリー・ウィルソン(現フルハム)ら、プレミア強豪産のレンタル移籍組がいた。最終的には、プレーオフ決勝でアストン・ビラに敗れてしまった(1-2)。 続いて、古巣から「SOSコール」に近いラブコールを受けた、チェルシー正監督としての2019-20シーズンは、FIFA(国際サッカー連盟)から補強禁止処分を受けていた状態でトップ4フィニッシュを実現した。勝率も5割を超えた。 しかし、1年半でトーマス・トゥヘル(イングランド代表新監督)に首をすげ替えられる運命にあった翌シーズンには、後任の下で主力に返り咲くことになるアントニオ・リュディガー(現レアル・マドリー)とマルコス・アロンソ(現セルタ・デ・ビーゴ)を、事実上の戦力外扱いとする状況も見られた。 では、監督として実績らしい実績のないランパードが、コベントリーで疑問符を取り除くにはどうすべきなのか? ニズは、次のように答えた。 「これまで、彼のチームは守備面での強さがイマイチだった。積極果敢に攻撃を仕掛ける一方で、敵にもいいように攻め込まれる。その問題点を解決できる監督に成長できているのかどうか。時には、現場を離れている状況がプラスに働くこともある。指導者としての自分自身を客観的に見直せる時間になるから。過去の苦い経験から学んで進化しているのか? 守備面でも歯応えのある戦い方をさせることができるようになっているのか? コベントリーでは、そういう目で眺められると思う」