AI時代にこそ必要となる「IQ以外の知性」って何? チャットGTPの答えを「正しくわかる」ための技
※3 両対数グラフ 縦軸と横軸がどちらも対数スケール(対数目盛り)になっているグラフ。対数スケールのグラフは、目盛りごとに値が倍々で増えていくので(ふつうのグラフが目盛りごとに10ずつ増えていくとしたら、対数グラフは目盛りごとに10倍、100倍、1000倍……と増えていくイメージ)、桁数が大きく異なる値の変化をおおまかに把握しやすい。ただし対数スケールの意味を知らないと、倍々の変化を直線的な変化だと勘違いしやすいので、注意が必要。たとえば「10」と「1万」は大きく離れた値だが、対数スケールでは「1」と「4」になるので、近い値に見えてしまう。
落合:たしかに、そうした変化を直線的な変化と勘違いしていたら、議論にならないですよね。それこそテクノロジーも指数関数的に進歩するので、AIも「まだこんなものか」と侮っていると、あるとき急激に精度が向上します。そういう感覚は、学校の数学教育で基礎をつくるしかないかもしれない。 ■「三角関数は役に立たない」論の愚かしさ 暦本:いま、高校の数学では線形代数※4やってないでしょ? ※4 線形代数 線形空間(ベクトル空間)を研究する数学理論。行列や行列式が重要な役割を持つ。微分積分と並んで、物理学、工学、経済学などで不可欠な実用数学である。
落合:やっていないと思いますね。3次元正方行列の固有値、固有ベクトルは大学からです。 暦本:だから、大学に入って「VRの研究をしたい」という学生たちが、みんな座標変換で詰まるんですよ。3次元グラフィックスって線形座標のかたまりなので、座標変換がわからないと何もわからない。そういう分野の研究を推進したいなら早くから線形代数をやっておくべきなんです。 ところが統計やコンピュータは積極的に教えたがるのに、なぜかその基礎となる線形代数は軽視する。重みづけのチョイスが謎なんですよね。
たしかに統計の知識は一見すると役に立ちそうなんだけど、本当はその前段階として線形代数をやっておいたほうが、じつは応用が利く。データサイエンス的なことは、それこそチャットGPTに聞けば何でも教えてくれるけど、理解の前提となる微分や線形代数がわからないと、教わったことの意味がわからない。そういう意味で、いまは数学を教える順序がちょっと崩れているんじゃないか。 落合:僕が仕事で使う数学は、解析と線形代数ですね。