AI時代にこそ必要となる「IQ以外の知性」って何? チャットGTPの答えを「正しくわかる」ための技
落合:いえ、大学1年生ですね。 ■生活から超越しすぎている複素数 暦本:たぶん理系の大学生でも、最初は「なんじゃこれは」と思うでしょ。見たことのない記号もたくさん出てくるし。微分に限らず、数学にはそういうところがありますよね。算数は、なんとなく身体感覚でわかるんです。円周を直径で割ったものが円周率とか、その求め方はわからなくても、何の話をしているかはわかるじゃないですか。 でもイプシロン─デルタとか、あるいは複素数などは、生活から超越しすぎていてわけがわからない。
もっとも、生活に密着しているはずの実用的な概念でも、身体感覚ではわからないものもあります。金融の「複利」なんかがそうですよね。利息を元本に組み込むので、エクスポネンシャル※2に増えていくんだけど、直観的には毎年同じ額だけ増えていくような気がするんです。 たとえば小学1年生が幅跳びか何かで30センチ跳べたとして、「明日から毎日1パーセントずつ距離を伸ばそう」といわれたら、とりあえず次は3ミリだから、できそうな気がするじゃないですか。でも、次の1パーセントは3ミリより長い。本当に1パーセントずつ記録を伸ばしたら、卒業までに月まで届いちゃうかもしれないわけです(笑)。
複利計算とはそういうものですけど、これは直観的にはわからないので、教育で身につけるしかないでしょうね。 その概念が身についていないと、会話が成り立たないこともあります。コロナ禍のときも、両対数グラフ※3が理解できないために、おかしな状況分析をする人がいました。AIという家庭教師がいても、そういう数学的な概念がわからないと、教わったことの意味がわからないかもしれない。投げる質問もトンチンカンなものになるだろうし。
※2 エクスポネンシャル(指数関数的) 「y=a^x」を、aを底とするxの指数関数という。その特徴は「倍々ゲーム」で値が大きく変化すること。これを「エクスポネンシャルな変化」という。人間は直観的にグラフが1、2、3、4……と直線的(リニア)に変化すると感じやすいが、指数関数的変化では1、2、4、8……といった具合に増え、途中から急激に値が大きくなる(1から始まった直線的な変化がになったとき、エクスポネンシャルな変化では1024になっている)。