蜷川実花が過去最大規模の“体験型”展覧会 「瞬きの中の永遠」で見えた過去と現在、未来
日常で何気なく目にするリアルな瞬間を立体芸術に昇華
WWD:立体作品から映像インスタレーションまで、14の作品群を全て体験すると一つの映画を観終えたような余韻が残った。来場客がZ世代からミドル世代まで幅広いのも興味深い。
蜷川実花(以下、蜷川):SNSでいただく感想が、みんな見事にバラバラなのがとても面白いです。見る人によって作品の受け取り方が異なり、それぞれに届くものが違うのはとても嬉しいですね。
今回の映像インスタレーションはCGを一切使わず、被写体は全て日常の延長線上にあるものです。手持ちのiPhoneで撮影した写真も多い。そんな何気ない瞬間が皆さんの心象風景につながったのではないかと思います。当たり前に広がる景色の見方を少し変えるだけで、気づかなかった美しさがある。それらの一瞬が重なり合って未来につながるという思いを展覧会のタイトルにも込めました。
WWD:これまでの象徴的な作風である花や蝶が舞う“極彩色”の世界だけでなく、時間の経過で移ろう陽の光や雨粒の反射といった光の表現も多彩だった。“光彩色”の空間に重点を置いた理由は?
蜷川:いろんな光が差し込むことによって、それぞれの想いや祈る気持ちが多様に表現できました。作品は多様性のメッセージを含んでいて、観る人が参加することで初めて完成します。光や音、表現の受け取り方が異なる皆さんで体験することに価値を置いています。
展示はまず、枯れた花々の空間展示「残照」から始まります。ひまわりは、咲いている姿が明るくて綺麗とよく言われますよね。太陽を目指して同じ方向を向いて咲きますが、実は枯れ方は個体によって全然違うんですよ。そこにスポットを当てることで、枯れ方に多様性があり、決してネガティブなことではないことを伝えたくて。また、この作品の真裏には、満開の花々で埋め尽くした桃源郷のような空間があるんです。物事には必ず表と裏の側面があり、それは表裏一体なのだというメッセージも込めています。