蜷川実花が過去最大規模の“体験型”展覧会 「瞬きの中の永遠」で見えた過去と現在、未来
WWD:データサイエンティスト・慶應義塾大学教授の宮田裕章氏とのタッグも新鮮だった。
蜷川:宮田さんと私は、専門領域は違うけれど、新しいものへの好奇心や前進意欲の高さが共通しているんです。以前、展覧会の解説文を宮田さんに書いてもらったことがありました。自分が撮った写真に言葉をつけてもらったことで、潜在的な思いが言語化されて立ち上がったような感覚がありました。その芯が通ることで、新しいクリエーションができそうだと思ったんです。そんな意欲的な私たちの思いを汲んで、クリエーションのアイデアを形にしていってくれたのが、桑名(功 森ビル 新領域事業部 TOKYO NODE運営室 本展クリエイティブ・ディレクター)さんや杉山(央 本展プロデューサー)さんです。
本展では映画制作のチームもたくさん関わっています。映画の美術を担当しているセットデザイナーのEnzoくんは、私の考えていることや良しとすることを全て理解してくれるコアメンバー。花のセットは、彼が中心に作ってくれています。音楽や映像の編集、照明のチームも映画製作で一緒のスタッフ。こういった面からも、展覧会というよりはゆるやかな映画を1本観るような、ストーリーを巡る体験に近い構成になったと思います。
メンバーはそれぞれ別の領域でキャリアがあり、個人でも活躍している。でも、あえてチームを組むことで、できることが掛け算で増えていきました。結果として、「(本展は)自分だけではできなかったこと」と全員が思える、幸福なクリエーションのパターンになった。モノづくりの姿勢として、チームで作る面白さを知れたのは、自分の中では大きな変化でした。
作品作りの主語が変化。一人で真摯に向き合う「I」から、共創と共有の「WE」へ
蜷川:コロナ禍のパンデミックを経験して、世界が音を立てて変わる瞬間を私たちはこの2~3年感じてきたじゃないですか。併せて自分の心境も変化して、作品作りの主語が「I」から「WE」に変わっていきました。今も世界では色々なことが起こっていて、身近な美しさによりフォーカスしたい、日常において視点を変えるだけで世界が変わって見えることを伝えたいと思うようになったのも、時代に応じた変化だと感じます。