ロッテ・愛斗、高い守備力で投手陣を救う 来季に向け「自分のできることを増やしていったほうが絶対にいい」と右方向の打撃を磨く
「違うチームに来ていい刺激をもらいましたが、分からないことだらけだったので、どういうふうにやっていけばいいのかなというのをすごく悩んだ1年でした」。 『2023年度現役ドラフト』で西武からロッテに移籍した愛斗は、移籍1年目の今季、52試合に出場して、打率.188、3打点だった。 ◆ 高い守備力で投手、チームを救う 打撃では悔しい結果に終わったが、昨年12月19日に行われた入団会見で「常に相手の隙を狙っているというのはありますけど、自分が良いプレーしたいという気持ちは全くなくて、このアウトを取ればピッチャーの人生が救われて、これが捕れなかったらピッチャーの人生が終わるというのを思いながら練習からやっている。人のために守っています」と話したように、その高い守備力で何度もチームを、そして投手を救った。 4月17日の西武戦、2-0の9回二死二塁で山村が放ったライトフェンス際の大きな飛球をフェンスにぶつかりながらも何事もなかったようにキャッチ。簡単そうにキャッチしているが、計算して捕球しているように見えた。 「オドオドしながら捕るのとか、ギリギリ合わせて捕るというのは、ピッチャーもキャッチャーも不安だと思うんですよ。難しい打球、人が難しく捕る打球をいかに簡単に捕るように見せるか。そうすることで、愛斗のところに飛んだら大丈夫と、安心すると思うんですよ。そこの信頼関係だと思うので、難しかった打球を難しく捕るのは誰でもできる。難しい打球を簡単に捕れることは誰もできないと思うので、その準備は前もってやっています」。 9月8日の楽天戦では、7-5の8回二死二塁で小深田大翔が放ったライトの前安打を捕ってから素早く送球し、二塁走者・小郷裕哉の生還許さなかった。「2アウト二塁からランナー・小郷さんで、ライト前に打たれました。“小郷さんが還らなかったの?”となったら、打球が強かったなとか思うと思うんですけど、なんで(楽天の三塁コーチャーが)止めたかと言ったら僕が早く(ボールを)離したから。そこを突き詰めて僕はやってきているのでずっと」と、愛斗の見えないファインプレーもあり、2点リードのまま8回裏へ進み、ソトの2ランで9-5とした。試合を決めたのはソトだったかもしれないが、8回裏の得点に繋げたのも愛斗の守備があったからこそだ。 10月4日のソフトバンク戦、「難しい打球を難しいように捕るのは誰でもできる。難しい打球をいかに簡単に捕れるか、簡単に捕っているように見せるかが大事だと思います」と、0-1の7回一死二塁で牧原大成が放ったレフト後方のフライ、前進守備を敷いていたが、難しそうな打球に見せることなくキャッチした。 ZOZOマリンスタジアムで10月9日に行われたCS前練習で、外野の守備について取材した際、「見える結果として、見えるファインプレー、見える部分を増やしていかないといけないなと思うんですけど、簡単なプレーを飛びついたり、スライディングして捕るのにリスクがあるので、難しいプレーでも簡単に見せる。本当に難しい時は根性で捕ると言うのをやり続けていくしかないと思うんですよ」と話していた中で、10月12日に行われた日本ハムとのファーストステージ第1戦、2-0の9回二死走者なしで郡司裕也が放ったレフト前に落ちそうな打球をスライディングキャッチ。 CS前の取材で話していた魅せるプレーをやっているように見えた。本人は「正直、あの捕り方はダサいなと思ったんですけど、一歩目切った時に飛び込んだら取れるという感覚で走っていたんですよ。飛び込まなくてもスライディングくらいでいけるな。頭から行くのは最終手段なので、スライディングでいけそうだと思って、スライディングで行った結果があの形で捕っちゃたので。全然みせられていない。ダサいなと思ったんですけど、捕れたので良かった」と振り返った。 外野守備に関してはレフト、センター、ライト、3つのポジションを高いレベルでこなせ、マリーンズの外野陣の中でも頭ひとつ抜けている。常時試合に出るためには、とにかく打つだけ。 ◆ 逆方向の打撃 打つ方もシーズン終了後にZOZOマリンスタジアムで行われた秋季練習では、チームとして“センターから逆方向”を意識した打撃を取り組んだが、愛斗はインコースの難しい球をうまく肘をたたんで右方向に打ったり、ライト線に落としたり、右方向への打撃が非常に良かった。 「僕のプレースタイル的にそういうこともできるので、バントとかエンドランもありましたけど、右打ちもできるし、右に長打を打つこともできる。僕の強み、得意なことなので、それを試合でできるように今やっている感じです」と秋季練習中の取材でこのように教えてくれた。 個別練習の時には福浦和也ヘッドコーチ兼任打撃コーチ(来季から一二軍統括打撃コーディネーター)から「それそれ、最高」、「最高、そうやって変化球を打て」と声が飛んだ。愛斗は福浦コーチからポジティブな声がけに「僕も死に物狂いで野球をやっている。誰よりも強い気持ちを持っていると思っているので、その姿を言葉に表してくれるのは嬉しいですね」と感謝した。 打撃練習中には福浦コーチから指導を受けている場面もあった。愛斗によると、「今日(10月21日)言われたのは右膝が内側に入らないように、ちゃんと右膝を残して打ちに行けというのを言われました」と明かし、「シーズン中とかだと、後から試合に出ることが多かったので、1回(打席が)回ってくる、2回(打席が)回ってくることもある。“1打席じゃ難しいのはわかっている、打てとは言えないけど、こうなってたよ”と言ってくれました。頭ごなしに言われるのではなく寄り添ってくれる。(途中出場から1打席で結果を残すことが)難しいというのを第一に置いて話してくれるから、聞きやすいというか、入ってきやすいなと思います」と福浦コーチとのシーズン中のエピソードを披露してくれた。 11月3日のライブBPでは「バッティング練習でやっているので、ライブBPでやってみたという感じですね」と、秋季練習に参加していた韓国ロッテのサウスポー・チョン・ヒョンスからライト前に安打性の当たりを放った。 愛斗は「もともとそっち(センターから逆方向の打撃)が得意。(移籍)1年目の今季は引っ張った方が強い打球が打てますし、そっちに向いてしまったので、それ(逆方向に打つ)をする勇気が出なかった」と明かす。 今季を踏まえて、「来年レギュラー取るために自分のできることを増やしていったほうが絶対にいいと思う。右方向に長打をもともと打てるので、それを伸ばしていこうかなと」と宣言。 自主トレは「浅村さんのところに行くんですけど、いろんな先輩、年下も来るのでアドバイスをもらいながら一からじゃないけど、今やっていることを肉付けしながら」と、右方向に強い打球を打つ楽天・浅村栄斗らと行う予定だ。 センターから逆方向の打撃に磨きをかけ、それをモノにすることができれば、打率は上がり今季以上に出場機会が増えるはず。一方で、山口航輝、西川史礁、山本大斗といった期待の右打者がおり、彼らよりも出場機会を得るためには春季キャンプから打つことで存在感を示していくしかない。プロ10年目の来季、バットで結果を残せれば、レギュラー、さらにはゴールデン・グラブ賞も見えてくる。 取材・文=岩下雄太
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