障害者ホーム3軒ともひどかった…連続でやむなく退去、母は途方に暮れた 重度でもOKのはずが、質より量?
▽性善説に立ってきた制度設計「考え方を根本的に変える必要がある」 自治体からは「国の制度設計に無理がある」との指摘も。兵庫県姫路市の担当者はアンケートにこう答えた。「新規参入の事業者では、障害福祉の基礎知識が全くなく、職員は無資格者や未経験者が中心という例もある。それらの事業所が障害特性に合わない支援を行い、問題を起こすことが多いのではないか。専門職の起用や研修の義務付けなどを定めるべきだ」 有識者にも意見を聞いてみた。筑波大の小沢温教授(障害福祉学)は「障害福祉の制度はこれまで性善説に立って作られてきたが、悪質な事業者をいかに排除するか、考え方を根本的に変える必要がある」と話す。 「障害福祉サービスは国民の公金で賄われているのだから、株式会社であっても、事業の利益は人材への再投資など公益的な目的に限定するといった規制も必要だ」と小沢教授。「自治体の評価会議で結果が悪い場合は改善命令を出したり、ユーザー評価を導入したりして、質を確保する実効的な仕組みを作るべきだ」と指摘した。
▽取材後記 障害者の中でも、特に受け皿が不足しているのが重い知的障害や自閉症で激しい行動障害がある人たちだ。 感覚過敏や独特のこだわりがあっても、それを伝えることができないため、ストレスを抱えやすい。適切な環境を整え、本人の希望をくみ取って対応すれば、多くの場合、行動障害は収まる。 だが、現状では悪循環に陥りやすい。事業者が利益優先で安易に重度者向けGHを開設→専門的なスキルや経験のない職員が不適切な対応をしてしまう→入居者の行動障害が激しくなり、拘束や虐待につながる―という事態が起きている。 国も専門的な人材を増やそうとはしているが、追い付いていない。参入ハードルを上げたり、自治体が抜き打ちで監査に入るなどして事後チェックを厳しくしたりすることが必要だと思う。