北九州の台所「旦過市場」は本当に再生できるのか? 老朽化建物が続々解体、成功のカギを握る超重要な要因とは?
福岡流出と競争激化
北九州市の報告書には記載されていないが、小倉地区への来街者減少の背景にはふたつの構造的な要因がある。まずひとつめは、 「福岡市への顧客流出」 だ。前述のコレット撤退の際にも、これが大きな要因とされていた。ふたつめは、 「郊外型商業施設の増加」 である。郊外型商業施設の増加は、具体的な数字からも明らかだ。2022年時点で、北九州市内の店舗面積が1000平方メートルを超える大型店は221店舗あり、これは商圏内の37.5%を占めている。また、総店舗面積は111万9827平方メートルに達し、商圏内の41.1%を占めている。これは2015年と比較して、店舗数で17店舗、面積で4874平方メートルの増加を示している。近年の新たな大型商業施設の動向を見てみると、 ・JR城野駅南口近くの「ゆめマート城野」(2018年) ・高須・学研都市地区の「フォレオひびきの」(2018年) ・守恒・徳力地区の「マルショク新守恒」(2019年) ・スペースワールド跡地の「ジ アウトレット北九州」(2022年) など、市内各所で大型店の出店が相次いでいる。また、 ・シーモール下関(2018年リニューアル) ・プラザモールなかま(2022年) ・スパイシーモール行橋(同) など、隣接地域でも大型商業施設の増加が続いている。このように、小倉中心市街地は 「二重の競争圧力」 に直面している。一方では福岡市という強力な広域商業都市への顧客流出があり、もう一方では市内および周辺地域での郊外型商業施設の増加による地域内競争の激化がある。 また、北九州市は五市の対等合併で成立した都市であり、小倉が必ずしも中心としての機能を果たしてこなかったことも原因のひとつといえる。 ・門司 ・黒崎 ・戸畑 ・若松 などはそれぞれ全く異なる街の雰囲気を持っている。このような状況下では、単なる商業機能の強化だけでなく、地域特性を生かした独自の価値創造が求められるだろう。