日本にも飛来する長距離偵察ドローンから無人戦闘機まで――中国最大のエアショーで見た「無人機大国」中国の姿
中国南部、珠海郊外で中国最大の航空ショー「中国航展2024」(珠海エアショー)が、11月12日から17日の日程で開催された。最新ステルス戦闘機など有人機が華々しく展示飛行を行なう一方で、会場内で目を引いたのが無人機(UAV)の展示だ。中国の無人機は日本近海にもたびたび出現しているが、中国は偵察・攻撃の両面でUAVの能力を高めている。 TEXT:綾部剛之(AYABE Takayuki) 長時間滞空型無人機は日本近海にも出現 日本領空に対する中国・ロシア軍機の接近は2010年代以降、急増しているが、このうちロシア機が昔ながらの爆撃機(および爆撃機改造の情報収集機)によるものであるのに対して、中国機は無人機がたびたび飛来している点で異なる。中国はいまやアメリカに次ぐ「無人機大国」と言っていいほどに、その開発能力を高めている。 中国の無人機の画像はこちら 日本にとって馴染みがある(?)と言えるのが、「WZ-7(無偵7)」高高度偵察無人機だろう。2023年1月に、初めて南西諸島に近くの東シナ海上を飛行する姿をスクランブル発進した航空自衛隊機が捉えており、以降、たびたび日本近海に接近している。同機はアメリカ製で航空自衛隊も運用する「MQ-4グローバルホーク」に準じる規模の高高度・長時間滞空偵察無人機(HALE)であり、戦略規模での偵察を実行する。また、同機と並んで展示されていた「WZ-10(無偵10、またはWL-10:翼竜10)」偵察・攻撃無人機は、今年5月に初めて日本近海に姿を見せた機体で、電子偵察/電子攻撃能力を持つと言われている。 有人戦闘機と連携する無人戦闘機も開発中 次世代無人機として日本やアメリカも研究開発に取り組んでいる無人戦闘機の模型も展示されていた。「FH-97A(飛鴻97A)」と名付けられた機体だ。この機体は新型ステルス戦闘機「J-35(殲35)」に随伴・連携して、戦闘を支援するものだと言われている。 機首下側に突き出た立体的なガラス窓は、アメリカのF-35戦闘機が搭載する先進的な可視光/赤外線センサー・照準装置である「EOTS(電子光学照準システム)」によく似ており、有人戦闘機とデータリンクできるなら、その戦闘能力を飛躍的に高めるだろう。また、注目したいのは前脚の前方に伸びた“棒”だ。これは空母発艦用のカタパルトと機体を連結する部品であり、同機が空母での運用を想定していることがわかる。なお、こうした無人戦闘機は日本もアメリカもまだまだ研究途上にあり、FH-97Aにしても現時点ではコンセプトモデルにすぎないと思われる。 対UAV用レーザー兵器も開発 最後は対UAV兵器だ。「車載戦術激光武器」と紹介されていたもので、「激光」すなわち「レーザー」である。近年の紛争では、偵察型や自爆型の小型UAVが、大量投入されるようになったことは、読者の皆さんもご存じと思うが、こうした低高度・低速(LSS)の目標を迎撃するための武器であると説明されていた。同様の車載型防空レーザーは日本も開発しており、つい先日の自衛隊創設70周年観閲式でお披露目されたことを、別の記事で紹介したばかりだ(記事リンク:https://motor-fan.jp/mf/article/275836/ )。 中国は以前より「LW-30」という車載型防空レーザーを公開している。仮に同様のものだとすれば、出力30kW級で、レーザー車両のほかに、レーダー・指揮通信車両と補給車両の3両で1ユニットを構成するものとなる。軍の車両と並んで展示してあったので、軍の機材であることは間違いないだろう(試作段階だとは思われるが)。 珠海エアショーでは、このほかにも多数の無人機および関連器材が展示されており、同国が次世代の戦力として重視していることが強く感じるイベントであった。
綾部 剛之