共和ヴァンス氏と民主ウォルズ氏が「10.1ガチンコ対決」、アメリカ大統領選は副大統領候補で決まるかもしれない
もう少し深読みしてみると、狙撃事件で九死に一生を得た直後のトランプ氏が、「自分の後継者」を意識して若いヴァンス氏を選んだということも考えられる。つまり「アメリカ・ファースト」主義、反グローバリズム、反移民、労働者重視などのトランプ路線は、今後はヴァンス氏に引き継がれることになるのであろう。 ヴァンス氏はラストベルトの白人貧困家庭に育った。著書『ヒルビリー・エレジー』(訳すと「田舎者の哀歌」。光文社から邦訳あり)は、その少年時代の赤裸々なメモワールである。
オハイオ州ミドルタウンの白人労働者たちは、皆、自分たちの生活がうまくいっていないことを知っていた。街の新聞には、「死因を伏せた死亡事故」が毎日のように掲載されていた。要は薬物の過剰摂取のせいで、ヴァンス少年の母親も立派な「ヤク中」だった。家庭は崩壊寸前だったが、包容力のある祖母がいてくれたお陰で、なんとかグレずに成長することができた。 高校卒業後に海兵隊に入り、ヴァンス氏の人生は好転する。除隊後にオハイオ州立大学を卒業し、支援を得て名門イエール大学に進学する。そこで弁護士の職を得て、妻とも出会った。著名実業家ピーター・ティール氏の知己を得てシリコンバレーで成功し、若くして地元選出の上院議員になった。奇跡的な「成り上がり」人生と言えよう。
『ヒルビリー・エレジー』は、トランプ現象を説明する話題の書として一躍全米のベストセラーとなる。当初、ヴァンス氏はトランプ大統領に批判的であったが、上院議員選挙に際して全面的な支援を仰ぐことになる。 以後は一番弟子となるわけだが、彼自身の人生が、「トランプ的なるもの」を体現しているとも言える。トランプ第1期政権で活躍したスティーブ・バノン氏は、「トランプがイエス・キリストなら、ヴァンスは聖パウロ」と評している。つまりイエスの教えを、広く伝導する役回りということになる。
■「もしトラ」なら、2026年中間選挙後はレイムダック化 ここで少し思考実験をしてみよう。来たる11月5日の投票日にトランプ氏が勝つとしよう。来年1月には第47代大統領に就任するが、すでに第45代大統領を務めたトランプ氏は憲法上の規定により、最長でも任期はあと4年である。78歳と高齢でもある。しばらくは政敵への「仕返し」に熱中するだろうが、じきに飽きてしまうのではないか。 そうなると、今までトランプ氏に付き従ってきた共和党議員たちの行動にも変化が生じるだろう。特に2026年の中間選挙を過ぎれば、もう大統領の気まぐれに振り回されなくて済む。トランプ政権は一気にレイムダック化するはずだ。