総選挙で国民は何を選べばよいのか? 暮らしの実感を政治に伝える手段が選挙 ジャーナリスト・田中良紹
安倍首相が「アベノミクス解散」と銘打った総選挙の投票が14日に迫っている。今回の解散・総選挙の最大の特徴は投票率を上げないように仕組まれた事だと私は見る。それは自民党が政権を取り戻した前回の総選挙を教訓にしている。前回、自民党は衆議院の6割を超す大量議席を獲得したが、最大要因は投票率が6割を切って過去最低を記録した事にある。無党派が選挙に背を向けた事が組織票に支えられる自民党を有利にした。 【図表】14日投票の衆議院選 どうやって投票したらいいの? もう一つの要因は、分裂した野党が選挙協力を行わず各選挙区で競合した事である。長年にわたって選挙協力を繰り返してきた自公とは対照的であった。小選挙区で自公が獲得した得票数は2650万票、野党が獲得した総得票数は3200万票で、「二大政党」であったならば安倍政権の誕生はなかっただろう。
国民は投票に行かない?
自民党の全有権者に占める得票率は小選挙区で24%、比例区で16%である。つまり4人に1人以下の国民の支持で自民党は大量議席を獲得し、自公で3分の2を超す議席を占めた。これが安倍政権の力の源である。それによって特定秘密保護法は強行可決され、集団的自衛権の行使容認を国会の議論を経ぬまま閣議決定することが出来た。 この経験を最大限に生かして安倍政権は延命を図ろうとしている。従って狙いは無党派層を投票所に行かせない事、そして野党が選挙協力する暇を与えない事である。だから何のためか分からない選挙にして国民に興味を抱かせず、解散から公示までの期間を過去最短の11日間にして野党に選挙協力の時間を与えなかった。 その仕掛けはこれまでのところ有効に作用している。メディアの予測で「自民党が300議席を超す勢い」と報じられたが、予測の前提となる投票率は過去最低をさらに下回る55%に設定されている。安倍政権の思惑通りに国民は投票に行かないと思われているのである。果たしてそれが民主主義の基本とされる総選挙の姿であって良いのだろうか。