総選挙で国民は何を選べばよいのか? 暮らしの実感を政治に伝える手段が選挙 ジャーナリスト・田中良紹
アメリカとイギリスがごちゃまぜ
実は自民党単独政権が長く続いた日本の選挙にはおかしな仕組みが多々ある。それらを取り払わないと本当の民意が反映される事にならないと思うが、現在の仕組みで当選してきた議員たちには現在の仕組みを変える事に抵抗がある。変えれば自分が当選できなくなる可能性があると考えるからだ。 そこで何がおかしいかを国民に分かってもらい国民の意識を変えるしかない。おかしな事の第一は、個人を選ぶのか、政策を選ぶのかがはっきりしない事である。日本では選挙になると掲示板にポスターが貼られ、候補者が宣伝カーで名前を連呼する。これを見ると日本の選挙は「個人を選ぶ」仕組みである。 同じように個人を選ぶ選挙をしているのはアメリカである。アメリカは政策を選ぶ選挙をやらない。候補者は所属政党と異なる政策を主張する場合がある。有権者は候補者の過去の業績や人間性を判断材料にして投票する。候補者は自分を知ってもらうため選挙に資金を投ずる。そして有権者は候補者に候補同士の討論や選挙民との対話を求める。当選した議員は党議拘束に縛られない。
ところが個人を選ぶ仕組みの日本なのに、選挙では「政策が大事」だと言われる。各政党はマニフェストを作り政策を羅列する。これはイギリスの選挙を真似している。しかしイギリスの選挙は候補者個人を全く無視する。個人のポスターも事務所も宣伝カーで名前を連呼する事もない。マニフェストを配って歩くのが選挙運動である。だから選挙に金はかからない。そして当選した議員は党議拘束に縛られる。 日本の選挙はアメリカとイギリスがごちゃまぜである。安倍総理が「アベノミクスの信を問う」というのなら政策選択の選挙だが、選挙区に行けばひたすら候補者は自分の名前を連呼する。しかしどういう人物かが明らかにされる訳ではなく、お題目のように政策が唱えられるだけである。有権者は政策の中身も候補者の中身も良く分からずに選挙する。 有権者がマニフェストを読んで政策を理解するのは大変である。各党とももっともらしい政策を書いているので比較するのが難しい。分からないから投票に行く気がしないという人もいる。それで投票率が下がるのではマニフェストは逆効果でしかない。そこでどうしたらよいかを考える。