日産9000人削減の衝撃! ゴーン前会長が残した3つの“負の遺産”とは何か? 「ルノー支配」「販売偏重」のツケが招いた辛らつ現実を再考する
ゴーン氏が残した三つの「負の遺産」
三つ目の「負の遺産」だ。 ●販売重視、販売奨励金をつぎこんでブランド毀損 ゴーン氏がCEOであった間、日産自働車は、「販売台数拡大」が最重点目標となり、製品開発が滞った時期があった。販売至上主義の結果、販売奨励金が拡大してブランド価値を毀損(きそん)することもあった。 ゴーン氏が退任してから、日産自働車は、この体質を改めることにしっかり取り組んだきた。ブランド価値を毀損するような販売奨励金の出し方はしなくなり、遅れていた製品の開発ラインアップも充実させてきている。 ところが、この中間決算の不振を見ると、販売が悪化すると販売奨励金が拡大して業績を痛める構造は変わっていない。 これまでの製品開発の遅れを取り戻すのは容易ではなく、結果的に販売を重視せざると得なくなる。ゴーン氏が残した 「販売重視の弊害」 が、今も続いていると考えられる。
ゴーン氏の負の遺産整理がようやく動き出した
ゴーン氏は2018年11月に金融商品取引法違反容疑で逮捕され、これを受けて2019年4月には日産自働車の取締役を解任された。 その後も日産自働車がルノーに43.3%の議決権を握られている状況は続いたが、それも2023年11月に解消された。ルノーの日産自動車に対する出資比率は15%まで落とされ、日産自働車がルノーに対して保有する議決権と同じ比率とした。これで両社の資本関係は対等となった。 これで、やっと日産自動車は、ゴーン氏の負の遺産解消を本格化できるようになった。2024年8月に、日産はホンダと戦略的パートナーシップ検討の覚書を締結した。三菱自動車も加えた3社での提携となるが、ここにホンダが入った意義は大きい。 日産は、もっと早くから、ホンダとの連携を目指すべきだった。次世代自動車の開発を、技術力に優位性がないルノーと共同で取り組んでも、目立った成果は得られない。ホンダとの連携を目指すべきであったが、ルノーに支配されている内は、それができなかった。 ここから日産自動車の再生に向けての挽回が始まることを期待したいが、ルノーに支配されていた間に遅れた、次世代自動車の開発で巻き返すのは容易ではない。
窪田真之(ストラテジスト)