日産9000人削減の衝撃! ゴーン前会長が残した3つの“負の遺産”とは何か? 「ルノー支配」「販売偏重」のツケが招いた辛らつ現実を再考する
ゴーン氏が残した三つの「負の遺産」
以下は、ふたつ目の「負の遺産」だ。 ●HEV・PHEVのラインアップを持たない 2024年9月中間決算で、日産自動車の北米台数は前年同期比2.2%減の29.9万台で、北米事業の営業利益は同54.6%減の168億円に沈んだ。米国で売れ筋の車種がなく、販売苦戦によって販売奨励金(自動車メーカーがディーラーや販売店に車両の販売促進を目的として支給する金銭的なインセンティブ)が膨らんだことが原因だ。 米国では、2022年からEV(BEV:電気自動車)が不人気で、HEV・PHEV人気が高まっている。日産はそのラインアップを持たないことが苦戦の原因となっている。 トヨタ・ホンダは、HEV・PHEVを重視しつつ、EV(BEV)の開発も進める戦略だった。ところが、日産は、カルロス・ゴーン氏の経営時に、HEVを捨てて 「EV開発一辺倒」 になった。その影響から、HEV・PHEVで出遅れていることが致命的である。 現在は、E-POWERという独自のハイブリッドシステム(エンジンを発電専用で使いモーターのみで車を動かす)で勝負しているが、HEVに比べて評価は低い。 日産自動車はHEVを捨ててEVに注力してきたものの、EV大国の中国で競争力がない。中国は、国家戦略によって、 「新エネルギー車(EVとPHEVと燃料電池車)」 の拡大を急速に進めてきた。その効果で、2023年には新エネ車の販売比率が38%まで急伸した。EV最大手のBYDだけでなく、多くの地場メーカーが次々と低価格EVを出して、販売を伸ばした。 中国製EVは、米国から締め出されつつあるものの、東南アジアなどへの輸出を大きく伸ばしている。日本車シェアが高い東南アジアで、中国製EVがじわじわ浸透している。 日産自働車は、EVの低価格化で中国メーカーに遅れ、高機能化で米国テスラの後塵(こうじん)を拝している。ルノーに経営権を支配されてきたため、EV戦略でも差別化戦略を打ち出せていない。