「野菜一つ100円では飯は食えんです」「飢えるのは時間の問題」 深刻過ぎる農家の実情をレポート
「野菜が100円では農家は飯を食えんです」
同じことは、同県益城町(ましきまち)で30ヘクタールのサツマイモ畑を耕作し「芋屋長兵衛」ブランドで菓子を販売する香山勇一さん(67)も言う。 「白菜100円、キャベツ100円。スーパーで100円を超えたら高いなどと言うのは日本ぐらいです。農産物はみんな百均だと思ってるんですね。そういう意識が変わるといいですね。百均じゃ、農家は飯を食えんです。私らは持続性のある農業をやりたいんです。だけど、買う人が百均が当たり前だと思っている限り続きません」 菊陽町でニンジンを8町歩ほど作っている豊住量基さん(77)もこう憤る。 「10年前に100円したニンジンなら、今は200円してもおかしくないでしょ? だって肥料もタネも値段は倍だよ。それなのに同じなんだ。異常だよ。そう言ったら、需要と供給のバランスだから仕方がありませんよと返されるんだ。バカにしているよ」
「収入が1000万円では生活は無理」
卵もそうだ。物価の優等生といわれ安い値段で売られてきたが、鳥インフルエンザで一時的に値段は上がったものの、元の水準に戻った。考えてみれば、この30年、消費者の賃金が上がっていないこともあり、量販店側が価格を抑えようとするのは当然だろう。 「農家は儲からんのを知っているから、今は百姓だというと嫁も来てくれん。だから後継者がおらんようになる。儲かって魅力があれば、後継者に不自由せんでしょう」と豊住さん。ちなみに豊住さんは幸いにも後継者に恵まれたそうだ。 農家の台所はどこも火の車だというが、農家に収入を尋ねると、1500万、2000万という景気の良い数字が飛び出す。それがなんで儲からないのか不思議だったが、千葉県の信孝さん(仮名)はこう言った。 「収入が2000万円あるといっても、それは売り上げであって、経費が少なくとも7割から9割かかるから、それを引いたら所得はものすごく下がるよ。収入2000万円だと所得は400万円にとどくかどうかだな。売り上げ1000万では、まず生活は無理だな」 農業は儲からない。だから後継者もいなくなる。この悪循環が、優良農地であっても農家に売らせる動機になっているのだ。 こうした農家の事情をよく表しているのが、農水省の「人・農地プラン」の実施状況だろう。地域で農家が話し合って、将来の農業をどうするか計画書を出せというものだが、ほとんどが話し合いすらしていない。なぜなら、大半の農家が自分の代で終わりだと思っているから未来など構想し得ないのである。これは千葉県や熊本県だけでなく全国共通なのだ。