“うなぎ戦線” 格差拡大か 200円~1万円の攻防
今年も7月の「土用の丑(うし)の日」が近づいてきた。昨年はうなぎ価格の高騰で、専門店は廃業が相次ぐほど苦戦したが、今年は少し様子が違うようだ。昨年来のアベノミクスによる株高と、2020年東京オリンピック開催決定で、企業御用達のうなぎ専門店の活況が漏れ伝わってきた。一方で、牛丼チェーンのうな丼は昨年より値上がりし、うなぎ好きの庶民は悲鳴を上げる。そこで、うなぎ風味を208円という格安で楽しめる新商品も現れた。 「アベノミクスと、東京オリンピック決定で、客の雰囲気が変わった」。東京都千代田区のうなぎ専門店の女将は、明らかな変化を感じている。客の表情が明るくなった。同店は、土用の丑の日には1万円(税抜き)のうな重を提供する高級店。大企業の本社が居並ぶ丸の内にも近いため、企業の利用が半数以上を占めている。例年、土用の丑の日は2時間待ちの行列ができるほどだったが、昨年はさっぱりだった。うなぎ高騰のニュースが駆け巡り、お客のうなぎ離れが進行。行列はできず、売り上げは予想をはるかに下回った。 高価なうなぎ専門店にとって痛かったのは、うなぎ価格上昇だけではなかった。医師に高級料理の接待を繰り返していた製薬業界が、飲食代金の上限を5000円とする自主規制を2012年4月から始めた。このため、高級飲食店の多くがで売り上げが激減。その上、昨年はうなぎの仕入れ価格が高騰し、このうなぎ専門店でも料金を20%ほど値上げせざるを得なかった。まさに踏んだり蹴ったり。 しかし、にわかに“神風”が吹いてきた。長らく1万円を割り込んでいた日経平均株価が、アベノミクスで一気に1万5000円前後にまで上昇したうえに、昨年9月に2020年東京オリンピック開催が決まり、主要なお客である企業幹部らの様子が明らかに変わった、というのだ。女将は、どれくらい売り上げが増えたかは明かさなかった。ただ、多くの企業が高級うなぎ店のようなお店に足を運びやすくなっているのは事実のようだ。中でも、建設会社の利用が目に見えて増えているという。多数の株式を保有するある企業幹部は、女将に「上がったからといって株はすぐ売れないけど、気持ちは本当に明るくなってきたよ」と漏らしたという。