【天皇賞秋】武豊が大胆騎乗でドウデュースを勝利に導いた背景 陣営がこの秋に感じていたこととは…
[GⅠ天皇賞・秋=2024年10月27日(日曜)3歳上、東京競馬場・芝2000メートル] 27日に東京競馬場で行われた第170回・天皇賞(秋)は、武豊騎乗の2番人気ドウデュース(牡5・友道)がスローペースをものともせず、大外一気の末脚を発揮して快勝。4年連続のGⅠ勝ちを成し遂げた。挫折とリベンジを重ねてきたハーツクライ産駒の5歳馬が、その集大成を残り2戦の競走生活で披露する。
〝日本の総大将〟襲名
GⅠ馬6頭を含む豪華メンバーが集った2000メートル決戦は、東京競馬場に7万2485名の観衆を呼び込んだように注目度が高い一戦となった。並み居る強敵相手に4年連続GⅠ勝利を手にしただけでなく、〝展開〟という概念をも打ち砕いたドウデュースは、まさに〝日本馬の総大将〟を襲名したといえる。 ハナ候補だったノースブリッジがあおるようなスタートで、まさかの後方追走。結果的に先頭に立ったホウオウビスケッツが刻んだ1000メートル通過59秒9は、良馬場の古馬GⅠとして超スローといえる。実際にホウオウは自身、上がり3ハロンを34秒0にまとめて3着に奮闘。好位で脚をためたタスティエーラが2着を確保したように、展開は明らかに先行有利だった。
経験に裏打ちされた大胆騎乗
しかし、天才が選択した前半のポジションは14番手。五分のスタートを決めながらも促さずに後方待機を決め込んだのは、決して破れかぶれではなく、第一人者だからこその経験則に裏打ちされた、必勝プランだった。 「きょうは腹をくくって、ラストの脚にかけようと。ペースは遅かったですが、〝これしかない〟と。直線で広い外に出せるポジションが取りたかった」とは今回の勝利が歴代最多タイの天皇賞・秋7勝目となった武豊。とかく凡人は縦の位置関係を気にしてしまうものだが、〝盾男〟と呼ばれる55歳のベテランは違う。ストレッチロスなくパートナーの能力をフルに引き出すことこそが、府中二千の必勝法だと体得していた。 とはいえ、上がり3ハロン32秒5はレース上がりを1秒2も上回る桁違いの決め手。GⅠ勝利時の上がりタイムとしては歴代最速の数字でもあった。「前の馬も伸びていたのに、届いたどころか完全に差し切りましたからね。まるで倍速で走っているようでした」。かつて〝飛ぶ〟と表現されたディープインパクトの背中を知る名手でさえ舌を巻く究極の末脚だった。