自社製品の改善と社内のIT活用に尽力--パロアルトネットワークスのCIOの役割
では、Rajavel氏は、社外と社内においてそれぞれどのような貢献をしているのだろうか。Palo Alto Networksが社外の顧客に提供しているセキュリティソリューションは、プラットフォーム型のアプローチで、エンドポイントやネットワーク、クラウド、アプリケーション、セキュリティ運用(SOC)まで多岐にわたる。Rajavel氏のチームは、それらのパフォーマンスや安定性、信頼性、機能性などあらゆる面で改善や向上に貢献している。 例えば、ネットワークセキュリティの領域では、祖業の次世代ファイアファイアウォールから近年のゼロトラストに基づくセキュアアクセスサービスエッジ(SASE)、SD-WAN、最新のリモートブラウザーまで同社製品の計画にRajavel氏のチームのフィードバックが関係しているという。 クラウドセキュリティの領域では、ハイパースケーラー各社の環境において顧客が稼働させている無数のコンテナーや仮想マシンを同社が保護しているといい、マルチハイパースケーラーに対応した安定的なセキュリティサービスの提供にもノウハウが生かされている。 特に、世界的に続くセキュリティ人材の不足からSOC運用の改善が喫緊の課題となる。同社のSOCでは、徹底的な自動化を図ることによって、12人の担当者だけで毎日7.5テラバイト以上ものデータと1億2000万件近くのセキュリティイベントを処理し、インシデント相当事案は1日当たり100~220件ほどだが、そのほとんどを自動で対応し、担当者が直接対応するものは1~2件に過ぎないという。 約2万人の社員や関係者の生産性向上や業務効率改善にも大きな成果を上げている。Rajavel氏のチームは、2022年に生成AIの社内活用を提言し、問い合わせの対応でチャットボットによる自動化を推進した。 「社内からIT部門や経理部門、人事部門などへの問い合わせは年間で約48万件あります。例えば、『システムにアクセスしたいので設定してほしい』『パスワードをリセットしたい』『子供が生まれたので家族の情報を更新したい』といったものです。人が対応すれば2~3日から数週間を要し、スムーズに手続きが進まないことも起こり得ます」 そこでRajavel氏は、AIと自動化によって担当者による問い合わせへの対応を90%削減する目標を設定した。単に生成AIを導入するだけでなく、対応品質の継続的な改善や、誰もが容易に使えるユーザーインターフェースの開発など多くのことに取り組んだ。 「問い合わせの内容を分析したところ、60%はパスワードをリセットなどのアクションを求めるもので、これを自動化できます。20%は検索などでは分からない情報を照会するもので、これも生成AIにより要約して自動的に提供可能です。残りの20%はシステム上の欠陥やデータの問題に関連する問い合わせになり、根本原因を特定して修正することにより解決できます」 社内からの問い合わせ業務の変革では、SOCのワークフローを支援する自社製品も応用したという。これによって削減目標の90%のうち約60%で自動化を達成したという。「これによって問い合わせ業務にまつわるコストが半分以下になり、収益に大きく貢献しました。同時に、対応に要する時間も数分~数時間で完了しており、従業員全体の生産性向上が大幅に向上しました」