「アクセル」を踏むと何が起きる? キャブ時代から電制スロットル時代まで
そこで、「電制スロットル」の登場である。エンジンが振り子現象を起こさないよう、動きと逆位相の制御をしてやるのだ。例えば天井クレーンを思い出して欲しい。天井クレーンが動き出す時、荷物は慣性によって止まり続けようとし、やがて力に負けて動き出す。そしてクレーンを追い越して前へ移動する。この振り子現象が起きた時、戻る時に一瞬クレーンの前進を止めてやると振幅が減る。それから再度動かすと振れを抑えることができるのだ。そういう制御を電制スロットルは受け持っている。 あるいは変速タイミングだ。時速80キロでゆっくり巡航している時に追い越しで加速したいとする。エンジンは低負荷低回転なので、いきなり加速するのは難しいシークエンスだ。ターボならなおのことである。もちろんこの場面では前述のように電制スロットルが瞬間的な操作を行い、ターボの過給圧を最短時間で立ち上げるように努力する。トランスミッションがCVTなら、ここで変速比を変えてエンジン回転ごと上げる操作が加わる。 パワートレイン 、つまり力を作り出すエンジンから、路面に力を伝えるタイヤまで、数多くの部品が存在する。そしてそれらの進化の多くは、このアクセル系の進化に依存している。しかしながら、裏側でコンピューターが勝手にやっていることを人間は関知できない。例えば、最後に挙げた追い越し加速の時、ドライバーがイメージしているのは、ギヤ比を変えてまでの強いダッシュではなく、ギヤをホールドしたままエンジンにじんわり頑張ってもらいたい加速だったりもするのだ。電制スロットルによって、これまでできなかったことが可能になった半面、ドライバーのイメージ通りにクルマが反応しない場面もまた増えたのである。 (池田直渡・モータージャーナル)