「アクセル」を踏むと何が起きる? キャブ時代から電制スロットル時代まで
■エコカー時代
しかし、1997年の第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)で「京都議定書」が採択され、CO2の抑制と省燃費化が格段に強く求められる時代になると、また一段と制御が難しくなる。 まずは「ポンピングロス」 を減らしたい。ポンピングロスとはこういうことだ。キャブレターのところで説明したが、スロットルは全開の時以外、空気の吸い込み口を塞いでいる。これは初期のインジェクションでも同じだ。深く息を吸い込む時に口をすぼめたら、吸い込むのが大変なのと同じく、スロットルバルブが吸気口を塞ぐとエンジンのパワーをロスしてしまう。全開以外の時ということは、日常的な運転の時は、常時このポンピングロスが発生しているということだ。それでは困る。 吸気を絞るから息が苦しくなるのなら、スロットルを閉めるのをやめればいい。こうすると空気は常に最大吸気量なので、ロスはなくなる。しかし全開の吸気量に合わせた燃料噴射を行うと、当然のごとくエンジンは全開になってしまう。それは困る。だから吸気は全開でスカスカに通しておいて、アクセルに応じて燃料噴射量だけを変えてやるようにした。これだと酸素が大量に余る。余った酸素は燃焼室で高温にさらされて窒素と化合し、NOxになってしまう。これもまずい。排気ガステストで不合格の道まっしぐらになってしまう。 そこで目をつけたのが排気だ。排気ガスには酸素がほとんど残っていない。大半は二酸化炭素で、他に水蒸気などが混じっている。例えば吸入空気量が本当は半分でいい状態だとすれば、排気管から排気ガスを冷却しながら引っ張ってきて、吸気の半分を排気ガスにする。空気50%、排気ガス50%だ。こうするとパワーロスの原因になる吸気弁を、全開にしながら酸素供給量を減らすことができる。ポンピングロスが減るのだ。 しかも、燃焼室にCO2や水蒸気などの不活性ガス(つまり酸化し終わって安定した気体)を入れると、燃焼温度が下がる。前述のように、燃焼温度が高いと窒素が酸化してNOxが発生するわけだから、余分な酸素がない上に温度が下がるという二つの面でNOxの発生は抑制されるわけである。 ついでにこの不活性ガスが燃焼で加熱されて膨張する分もピストンを押し下げる力になるから、熱の有効利用にもなる。 補足として書いておくと、スロットルとアクセルについてキャブレターや初期のインジェクションの時代は同義と考えてよかった。リモコンと本体の関係だったからだ。しかしこの後に説明する通り、アクセルペダルを踏んだ結果、コンピューターが判断して様々なものを動かす様になると、もはやスロットルとアクセルは同義とはいえなくなる。とりあえずここではスロットルは吸気通路の面積を調整する弁だと定義をしておく。この動きはとても複雑で、普通の運転領域では開けっ放しにしてしまうことができても、過渡的には使わないとならない領域があるので、完全に廃止にはできない。本当はスロットルがあるのに概念を優先して「ノンスロットル」と言ったりするので大変ややこしいのだ。