「福島12市町村」が舞台の豪華キャストによる異色ドラマ『風のふく島』。制作の裏側を青野Pが語る
東日本大震災から間もなく14年となるが、その間にも次から次へと日本各地で様々な災害が起こるために、報道も、人々の関心も、次々に上書きされてしまう感がある。そんな中、3.11の原発事故に伴う避難指示対象地域「福島12市町村」(※)の実在の移住者たちにフォーカスした1話完結のオムニバスドラマ『風のふく島』が1月10日より放送開始する。 【写真】第1話で馬術競技・元日本代表の青年を演じた佐藤大樹 実在する場所やモデルとなる人物への取材から着想を得てストーリー化した本作。企画・プロデュースを手掛けるのは、杉野遥亮主演『直ちゃんは小学三年生(五年生)』や本郷奏多・大沢一菜W主演『姪のメイ』のプロデューサー・青野華生子さんだ。 深夜ドラマながら豪華キャスト陣と実力派の監督と脚本家が揃っていることもさることながら、本作の異色な点は、骨太なストーリーからファンタジーで不思議な世界観まで、1話ごとに全く異なる味わいの作品になっていること。なぜ今、こうした作品を世に送り出したのか、青野華生子さんにインタビューした。 ※福島12市町村は田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村のこと。
福島12市町村の「移住者」にフォーカスした理由
――2023年9月に本作の前身ともいえる、福島12市町村を舞台にしたヒューマンコメディ『姪のメイ』が放送されましたが、今回の『風のふく島』では12市町村全てを舞台とし、実在の移住者への取材を経て作られたそうですね。スタートの経緯はどういったことだったのでしょう。 青野華生子P(以下、青野P):『姪のメイ』は、福島12市町村の移住支援センターの方と知り合ったのがきっかけでした。さまざまな移住者に関するお話を伺う中で、本郷奏多さん演じる30代独身の主人公・小津のように、合理主義で現代的な若者が、何かのきっかけで福島に仮移住してみたらどうなるのか描いてみたいと思いました。少し未来に希望を見出してみたり、少し勇気を出してみたり、感情を露わにしてみたり……そんな小津の姿を見た同世代の視聴者の心に、何か響いたらいいなって。 でも、『姪のメイ』には12市町村のうち、7市町村しか出ていない。せっかくなら12市町村を舞台したかったなという思いがありました。また、ウェブなどに公開されている移住者のインタビューを見ていたら、すごく面白そうな人たちがいっぱいいるんです。そしたら 、今回も協力で入ってくださっている移住支援センターの方からも 「次やるとしたら、もっと移住者にフォーカスしたものを作れないか」と相談されたんです。 ――その時点で今回の作品の形がイメージされていたのですか。 青野P:はい。AppleTV+で『リトル・アメリカ』というアメリカの移民を描いたアンソロジーシリーズがあるんですけど、私はそれが大好きで。この方式なら福島12市町村も、移住者たちの物語も描けるなと思いました。それで一昨年末か昨年1月くらいには今回の企画を考え、2月にはインタビューを始めていました。 ――福島全域じゃなく「12市町村」に限定したこと、地元住民じゃなく「移住者」にフォーカスしたことに意味があるわけですね。 青野P:そうです。私も『姪のメイ』に関わるまでは福島12市町村というくくりを知らなかったし、世の中的に馴染みのあるものではなかったと思うんですね。でも、世界でも稀に見る、一度「死」を体験した地域にすごく興味があって。 加えて現状でも、12市町村で海側・山側で違いがあるものの、もともとの住民がほとんど外に出たまま、戻ってきていないところもあるんです。人がいないと、場所は死んでいってしまう。そんな中、移住者を増やそうという動きがあって、私はそれを前向きな試みだなと考え、応援したいなと思ったんです。