【新日本】社長棚橋弘至、会社守ったけど「これじゃダメ」“自称社長”EVILに圧勝できず反省
<新日本プロレス:WRESTLE KINGDOM19大会>◇4日◇東京ドーム 「引退ロード」初戦を迎えた新日本プロレス棚橋弘至社長(48)が会社を守った。 【写真】丸め込んでEVILから3カウントを奪った棚橋 “負ければ即引退”をかけ、試合中に髪の毛を切られる屈辱を味わったこともある宿敵EVILに、ランバージャックデスマッチで勝利した。EVIL率いる極悪軍団ハウス・オブ・トーチャー(HOT)が暴れ回るたび、ファンからは「ああいうことをするなら、もう見ない」という苦情が集まっていた。そんなファンの心をつなぎ留める大事な勝利だった。 ◇ ◇ ◇ 新日本プロレスの社長として、“自称社長”のEVILの好きにさせるわけにはいかなかった。HOTにはたびたび試合に介入され、直前にはEVILにはさみで大事な頭髪を切られてしまう悔しさも味わった。みずから指定したランバージャック戦(両軍セコンドがリングを囲み、選手が場外に転落した場合はリングに押し戻す完全決着ルール)。やっぱりHOTの介入には苦しんだが、相手の必殺技EVIL(変形大外刈り)をうまく切り返して、抑え込みで3カウントをもぎ取った。 「東京ドーム大会が年間を通した流れの集大成であり、そこから始まる物語のスタート地点でもあるので。1回ここでけりをつけないことには、僕は気持ちよく引退ラストイヤーに進めない」。そう話した棚橋は、ディック東郷のパイプカット(逆さに抑え付けた相手の股間に、コーナーから飛び降りて手刀を振り下ろす技)で急所を痛めつけられ、鉄製ワイヤで首も絞められたが、相手のきめ技EVILをおきて破りで繰り出すなど、気持ちを見せた。 試合後、EVILとHOTのメンバーにボコボコにされたが、そこに現れて棚橋を救出したのが、今はAEWで戦う同期の柴田勝頼(45)。新日本プロレスが苦しい時代、ともに会社を支えた柴田から右手を差し出され「もし疲れてなければ、明日、試合しませんか?」と提案された。「俺は疲れたことがないので、やりましょう!」と力強い握手で応じた。 バックステージに現れるとまず「勝つには勝った、でもこれじゃダメなんだ、悔しいけど」と、EVILを圧倒できなかったことを反省。「今の俺にできる精いっぱいをこれからも重ねていくけど、『こんなの俺はやられてねえぞ』って、絶対EVILは言ってくるから。先手を取って、2年後か3年後かにまたやってやるよ」と、数年後、一時的に現役復帰してEVILとリマッチするプランまで口にした。 この日は軽々と飛んでハイフライフロー・アタックも見舞った。最近では見られなかったような状態の良さだった。昔を振り返り「プロレスを知らない人にずっとアプローチしたいと思ってて。プロレスラーの体が他競技の選手にも負けないように絞れてて、筋肉量があったら、それ自体が“引き”になると思って、ずっとグッドコンディションをキープしていた」という社長は、引退ロード初戦でその片りんを見せつけた。【千葉修宏】 ◆棚橋弘至(たなはし・ひろし)1976年(昭51)11月13日生まれ、岐阜・大垣市出身。99年に立命館大法学部を卒業後、新日本プロレスに入門。同年10月にデビュー。06年、IWGPヘビー級王座を初戴冠。09年、11年、14年、18年にはプロレス大賞MVPを獲得するなど「エース」として団体をけん引。19年にはIWGPヘビー級王座最多戴冠記録(8回)を樹立。23年末に選手兼任で社長に就任。26年1月の東京ドーム大会で引退することを表明している。