お墓に、もう墓石は要らないの? 樹木葬が埋葬のトレンドに
墓石を建てる「お墓」が一般的だった時代は終わり、樹木葬などの墓石をつくらない埋葬の形式が増えています。少子高齢化が進むことで、日本人の感覚も大きく変わり、江戸時代から続いたお墓に対する意識が変化したことが、コロナ禍以降明確になりました。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
将来を考え「墓じまい」を実行
お墓といえば、寺院や霊園が管理し、墓石を建て永代供養料(土地を借り続ける権利料)を支払う様式が、昭和までは主流でした。江戸時代の中期に寺請制度と檀家制度が確立し、多くの人が地域の寺院との強固に結びつき、地域の寺院に墓をつくることが定着しました。 しかし平成以降、とくに都会に住む地方出身者を中心に、生まれ故郷のお墓を移す動き(「改葬」という)だけでなく、埋葬方式自体を変更する方も多くなりました。 お墓を整理する「改葬」には、遺骨の搬出、墓石の解体・更地化、離檀料の支払いなどの経費が発生します。50万円程度で済む場合もありますが、檀家の減少に危機感をもつ地方の寺院も多く、必ずしも協力的とはいえません。一方で、東日本大震災で墓石の倒壊などの被害が出たため、お墓の再建をあきらめる方も増えています。 改葬の手続きは寺院の了解を得ることから始まり、かなり煩雑でなおかつ経費もかかります。新規に都会で墓地を購入するには、さらに負担がかかります。それでも改葬を実施するのは、お墓で子どもに迷惑をかけたくない、お墓の後継者がいない、といった理由の方が多いといえます。
お墓の様式に大きな変化が
地方のお墓を都市に移転すると経費も高額になるため、これを機に、お墓の形を変更する方が増えてきました。とくにコロナ禍以降は葬儀の簡素化が進み、家族葬が中心となったことが拍車をかけています。埋葬様式にこだわらない方が増えています。 墓石タイプのお墓を選ぶ方でも、縦長の大きな墓石は敬遠されています。時代の流れに対応し、ミニサイズの墓石付き区画を選ぶ方が多くなりました。都会の寺院でも、こうしたニーズに積極的に対応するため、これまで以上に小区画の墓地の販売に注力しています。 お墓の改葬に合わせて、従来の考えを変え、墓石の形を変更し「自分らしさ」を表現する方も増えています。ミニサイズ化だけでなく、例えば、縦長の墓石を横長に変更する、墓石に「心」「誠」「義」など気に入った文字を彫る、といった墓づくりが進んでいます。 さらに埋葬様式でも、旧来の墓石形式を選ぶ方が大きく減り、永代供養墓や納骨堂を選ぶ方が主流になりつつあります。その代表例が樹木葬です。