城氏が語る「完璧W杯壮行試合と久保建英の才能と課題」
森保監督は、後半に入って、左、右のサイドハーフを同時に代え、右のサイドハーフに久保を堂安に代えて起用した。 久保のポテンシャルは際立っていた。ボールタッチ、間合い、相手のディフェンスを交わすためのボールの置き場所など、細かい個の能力が光った。だが、久保はFKを含め5本シュートを放ったが決めきれず、代表史上最年少ゴールはお預けになった。 厳しい指摘をすれば、決定力という点では物足りない。絶好のポジションから絶好のチャンスを作るが、最後の最後に決めきれないのだ。後半24分には右サイドの深い位置に切り込み、キーバーと1対1になって角度のないところから左足でシュートを打ってクロスバーに嫌われた。おそらく彼は、最初に描いたイメージ通りに蹴ったのだろう。サッカー選手にとって「イメージを描く」という作業は非常に大事で、そこにセンスの有無が現れる。 だが、シュートの場合、イメージよりも打つ直前の状況判断が重要な要素になってくる。どこが空いているのか、どこを狙えるのか、どこに打つと成功率が高いのか、の判断を瞬時に行って、イメージに“上書き”して実行に移さねばならない。現段階では、まだ状況判断が甘く、シュートも雑。これらはハイプレッシャーの中での経験によって磨かれていくものだ。 レアルマドリードと契約した久保は、Bチームではなくラ・リーガ1部のマジョルカでプレーしている。育成プロジェクトとしてはベストの選択。高いレベルの中で、揉まれながら経験を積み状況判断力がついてくれば、それこそメッシ級になるだろう。 また久保が入った後半は、前半とはまるで違うチームになって攻撃のコンビネーションが消えてしまった。おそらく森保監督は、無失点を意識して戦術的に守備的なシフトを取り、彼らにポジションの固定を指示していたのだろう。「チャンスがあればゴールを狙う」という戦術だったことはわかるが、それにしても個の能力だけに頼るような展開に変わってしまっていた。久保もコンビネーションという部分では課題を残した。 森保監督は「ギラギラしたもの」を久保に要求していたようだが「チームの戦術を覚えよう」、「ミスなくプレーしよう」という姿勢が垣間見えた。チャレンジよりも確実性を重んじているようにも思えた。もっと“やんちゃ”でいい。もっと自分を自由に表現していいのだ。 久保は右サイドハーフで起用されたが、左利きでボールを中へ運ぶことのできる久保はトップ下よりこのポジションに適性がある。見てみたいのは、前半のメンバーと久保の融合で、中島、南野、久保の2列目の3人の並びだ。ただ右サイドハーフでは、堂安とのポジション争いになる。堂安は、ゴールを決めることができなかったが動きはいい。 W杯の2次予選のスタートではまだ久保をスタメンから試すわけにはいかない。パラグアイ戦のように試合途中からのアクセントとしての起用が現状ではベストなのかもしれない。