「AirPods 4(ANC)」をじっくりレビュー。「AirPods 3」「AirPods Pro 2」とはどう違う?
アクティブノイズキャンセリング(ANC)と外部音取り込み
AirPods 4(ANC)は、インイヤータイプのAirPodsとしては、初めてアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載しました。その使用感としては、低~中音域のノイズをメインに環境音を低減してくれる印象です。 具体的には、室内で作業しているときには換気扇の駆動音などがほぼ気にならなくなくなりますし、水を出しながら皿洗いをしていたり、掃除機をかけていたり、ドライヤーで髪を乾かしていたりしても、しっかり音楽や音声コンテンツを楽しめます。カナル型ではない製品としては、ANCの精度はかなり良好でしょう。 一方で、高音域に近い音はあまり低減されずにそのまま聞こえるので、ANCをオンにしてもPCのキーボードをタイプするような音はそのまま聞こえます。例えるならば、親指の腹で机を軽くトントンッ叩く音はANCでカットされるので聞こえ方が変わるのですが、爪の先で机をカンカンっと叩く音はそのまま聞こえてしまうわけです。また低~中音域も完全に消えるわけではないので、ANC越しでも、小さめの音で電子ピアノを弾いても、その音は結構聞こえました。 このあたりのANCの体験については、上位モデルのAirPods Pro 2の方が優秀。キーボードのタイピング音などが聞こえるのはこちらも共通ですが、AirPods 4(ANC)のそれよりも、より強力に環境音が低減されています。例えば、小さめの音で電子ピアノを弾くと、ほぼ聞こえないレベルまで低減されます。もし通勤・通学電車のなかで、ポッドキャストを楽しんだり、外国語のリスニングを行なったりしたい場合には、AirPods Pro 2があった方が、耳の負担も少なくなることでしょう。 そんな事情もあって、AirPods 4(ANC)について期待すべきは、ANCの精度ではありません。むしろ筆者が良いなと思ったのは、「外部音取り込み」機能の方でした。これはAirPods 4(ANC)が元々インイヤー型のイヤホンなので、外部音を取り込みやすいうえで、さらにマイクを使って自然に環境音を取り込めるから。 まさに「耳に何も付けてないのでは…」と錯覚するくらい自然に環境音を取り込みつつ、そのうえでBGMや音声コンテンツを楽しめるわけです。要するに、仕事場の同僚や家族との会話に気づかないような状況を作らずに、作業BGMを楽しめます。屋外に散歩に出かけるときには、BGMを楽しみながら、鳥のさえずりや風で葉のこすれる音、接近する車の走行音などに気付けるわけです。 なお、ANCと外部音取り込みモードを組み合わせて、周囲の雑音状況の変化に応じてANCのレベルを自動的にコントロールする「適応型」モードや、会話の開始を検知してANCを抑える「会話検知」機能などもあり、細々と手動コントロールをしなくて済むことも魅力でしょう。 イヤーチップが苦手で、日常使いに適したモデルを求めているなら、AirPods 4(ANC)が最適です。外部音取り込みを利用すれば、さらに軽やかな使いごこちが実現しますし、ANCをオンにすれば、皿洗いや掃除機などの家事をしながらでもBGMを楽しめます。 一方、楽曲の音質にこだわる方や、ANCの精度を求める方には、AirPods Pro 2がおすすめ。また、iOS 18で追加されたゲームアプリでは、AirPods Pro 2だと遅延が若干低減されます。筆者も実際に音ゲーをプレイしてみましたが、AirPods 4(ANC)よりも、AirPods Pro 2の方が若干高得点が出やすかった印象です(それでも遅延がないわけではないですが…)。 一般的にワイヤレスイヤホンの耐用年数は、バッテリーの寿命から約2~3年と言われていますが、実際にはAirPodsシリーズを3年以上使っているけど全然大丈夫という方も多いはず。旧世代の製品をお使いの方は、まだ製品が使えるうちは買い替えの決断が悩ましいところではありますが、新製品での体験も意外と充実していますので、年末年始の自分へのご褒美など、何か理由を付けて買い替えを検討してみても良いかもしれませんね。
<取材・文/井上 晃>