福島甲状腺検査の継続に「待った」の声。検討委員会で複数の医師らが指摘、「子どもたちに誇れる議論を」
「他県の人が勝手にやめてもいいとは…」
委員からは甲状腺検査の継続に賛成の声も上がった。 今井常夫委員(国立病院機構 東名古屋病院)は、「アンケート調査でも検査を続けてほしいという意見が圧倒的。他県の人が勝手にやめてもいいとは言えない」と述べ、高村委員は「県民の見守りという側面が大きいのでその点も考えていかなければならない」と語った。 また、日本甲状腺学会推薦の菅原明委員(東北大学)は、「過剰に手術はしていない。何もしないで甲状腺がんが見つかったら『スクリーニングしないからこうなった』と必ず言われる。今の段階で半分の人しか検査に参加してない。ここでやめたら『なんでやめたんだ』と県民から言われる」とし、「とりあえず今は進めてデータを蓄積するのがいいのでは」と述べた。 一方、検査を受ける人が対象者の半分程度にとどまっていることから「強制的に検査を受けさせられていると言えるのか」という声に対し、室月委員は次のように述べた。 「強制というのは数字ではない。検査をすれば不安は解消するのか。まず話を聞くことから始めるべきなのに、一般検診のように受けた子どもたちが『精密検査が必要』と言われた時のショックはいかほどか。将来、結婚や就職、保険の契約でどれぐらいの影響を受けるのか。そういうことが非常に大きな問題」 「検査の受診率も当初は90%以上だった。学校を卒業すれば受診率が下がるのもおかしいので、学校検査はやめて任意で受けようと言っている。その受け方もカウンセリングを中心とし、地道に県民の不安に答えていく。それが本来の利用のあり方ではないか」 中山委員も「強制という言葉は強すぎるが、学校という狭いコミュニティーでプレッシャーを受けやすいというのを大人は理解しなければならない」と発言した。 だが、検討会の終盤、重富座長は「あなたの意思で受けなさいよ、ということでやっていただく。それでよろしいでしょうか、お認めいただけますか。お認めいただいたということでこの委員会とすればそういうことにしたいと思う」と議論を終わらせた。 ◇ 東京電力福島第一原発事故後に始まった福島県「県民健康調査」甲状腺検査は、10月で開始から13年となった。 事故当時18歳以下だった県民ら約38万人を対象に実施されており、6月末現在で345人が甲状腺がんやがんの疑いと診断され、285人が手術を受けている(うち1人は良性結節)。 100万人に数人という割合で見つかる小児の甲状腺がんだが、福島で多く見つかっている理由は「放射線被ばくの結果ではない」というのが世界的なコンセンサスだ。 「むしろ高感度の超音波検査の結果」であり、放置しても生涯にわたって何の害も出さない病気を見つけてしまう「過剰診断」の被害を生んでいると指摘する専門家も多い。 しかし、福島県や検査を実施する福島県立医科大学は公式に過剰診断の被害を認めていない。認めていないだけでなく、検査のデメリットを十分周知せず、過剰診断という4文字でさえ公にしていない。 予算、研究業績、名誉……。約1000億円という莫大な予算が配分されて始まった県民健康調査の裏には、どのような思惑が渦巻いているのか。 ハフポスト日本版の甲状腺検査を巡る記事は「関連記事」から読むことができる。