福島甲状腺検査の継続に「待った」の声。検討委員会で複数の医師らが指摘、「子どもたちに誇れる議論を」
「考えるべきは子どもや若い人たちのこと」
室月委員はさらに、「今回の検討委員会の議題が7巡目の甲状腺検査についての承認を求めることであれば反対する」と表明した。 検査で見つかっている甲状腺がんと原発事故との因果関係は国際機関なども認められないとしており、室月委員は「過剰診断がかなりの割合で予想されるのであればこれ以上検査を実施すべきではない」「百歩譲ったとしても時間を置いて十分に検討する、振り返って議論するということが必要」と語った。 また、「組織や利害で捉えることなく、 むしろ考えるべきは甲状腺検査を受けている子どもや若い人たちのこと。10年後、20年後でも我々はきちんと考えて結論を出したと誇れるような議論と、委員会としての結論を出すことを願っている」と言及した。 しかし、県県民健康調査課の担当者は「アンケート調査で放射線への不安がある県民が多く、その不安に答えていかなければならない。デメリットも丁寧に周知を図りながら対応していきたい」と回答するにとどめた。 県や福島医大がメリットとして挙げているものは「根拠がない」と指摘する専門家もいる。 実際、県の冊子「甲状腺検査のメリット・デメリット」には、「過剰診断」という4文字さえ使われておらず、体や心の負担のほか、生命保険やローン契約の不利な取り扱い、就職や職場生活、結婚などで起こり得る過剰診断の不利益については一切触れられていない。 冊子には「早期診断・早期治療により、手術合併症リスクや治療に伴う副作用リスク、再発のリスクを低減する可能性がある」とあるが、スクリーニングが予後を改善したり、再発を減らしたりすることは証明されていない。 「甲状腺検査の解析により放射線影響の有無に関する情報を本人、家族はもとより県民および県外の皆様にもお伝えすることができる」ともあるが、これは疫学的なメリットであり、個人のメリットではない。
「反対の声は受け付けないのか」
委員からの発言は続き、熊谷敦史委員(量子科学技術研究開発機構)は「次に進む前にこれまでやったことの総括が必要」「学校検査の任意性についても専門家の意見を聞きたい」などと語った。 一方、高村昇委員(長崎大学原爆後障害医療研究所)は「県民の健康を守ることが大きな目的であるため、アンケート調査の詳細な解析、報告をきちんと公開し、議論を続けることは重要。ただ一定の人が検査を受けたいと思っていることは受け止めなければならない」と述べた。 検討委員会の重富秀一座長(双葉郡医師会)も「原発事故に遭遇した福島県民の心を考えれば甲状腺検査をここで中止するという選択はないとは思う」と発言。 「改めて7回目の実施計画はこれで進めていただきたいと思うが」と結論を出そうとしたが、中山委員が「(検査を)評価するタイミングは金輪際こないのか。生涯継続するということを言っているのか」と反論した。 県県民健康調査課の担当者は「検査が始まった当初は30年(続ける)と言われていたが、今後どうするかはまだ議論になっていない」と説明し、重富座長も「30年続けると考えれば(検査開始から)13、14年なので今辞める選択肢はないということ」と語ったが、中山委員は「以前から(検査を)辞めるべきだという意見もあったが、反対の声は受け付けない委員会なのか」と意見した。 その後も「1回(検査を)休むというのは十分ありうる選択」「立ち止まって総括すべきだという発言は心に残っている」という意見が上がったが、重富座長は「放射線の影響はない、こんなのは必要ないと言われても『本当にそうなのか』と思っている人もいるので、人の心を大事にしないといけない」と返した。