バイクブームという時代が生み出した、純正4ストミニバイクレーサー「モンキーR」
レジャーバイクの金字塔とも言えるホンダ モンキーは、その長い生産年数の中で様々なバリエーションを生み出した。そのバリエーションの中でも最も尖っており、今でも高い人気を誇っているのが今回ご紹介する「モンキーR」だろう。 【画像】モンキーRのディテールや関連モデルをギャラリーで見る(22枚) 文/Webikeプラス 後藤秀之
ミニバイクレースの礎を築いた1台
モンキーRが登場した1987年はバイクブームの絶頂期とも言え、売れ続けるレーサーレプリカは毎年モデルチェンジを行ない、各メーカーは次々に新しいコンセプトのバイクを発売し続けていた。モンキーRもそんな自由なチャレンジができた、バイクブームの中で生まれた1台であると言えるだろう。 モンキーRはいわゆる3/4サイズのミニレーサーレプリカと言われるジャンルに属していて、その元祖と言えるのはスズキが1986年に発売したGAG(ギャグ)であろう。このGAGはツインチューブタイプのフレームにバーディなどに搭載されていた空冷4ストロークエンジンを搭載し、フルカウルを備えた完全なレーサースタイルを持っていた。続けてヤマハからYSR50/80が登場、翌年にホンダからモンキーRとNSR50/80が発売される。 各社からこの3/4サイズのレーサーレプリカが出揃ったことで、ミニバイクレースも盛んに行なわれるようになり、実際にここから世界GPへと参戦するライダーを生み出す土壌ともなった。モンキーRもそのベースとして使われたが、人気はよりパワフルな2ストロークエンジンを搭載したNSRの方が高かった。その結果としてモンキーRは短命に終わってしまったが、後にその価値が認められて現在はプレミアが付く車種となっている。
4.5PSの12Vカブ系エンジンを搭載
モンキーRのデザインは低く構えたスワロータイプのハンドルバーを装着し、ツインチューブフレームの部分でカットされたレーサー風のタンクデザインを持つ。シートはレーサー風に後ろ側が盛り上がったデザインで、右側にはシートに沿うようにアップタイプのサイレンサーが装着される。フロント周りにカウルの類は装着されず、シンプルな丸目のヘッドライトが取り付けられている。今で言えばストリートファイターと呼ぶべき構成だが、この時代にはその呼び名はまだ無かった。 搭載されるエンジンは12VのCDI仕様となったカブ系ベースで、4ストローク空冷SOHC2バルブ49ccだ。同時期のモンキーには3.1PS仕様のエンジンが搭載されていたが、専用のバルブやカムシャフト、キャブレターやエキゾーストシステムを備えたモンキーRのエンジンは4.5PS仕様であった。ミッションはモンキーと同じ4速ながら専用設定となっており、モンキーの1速 2.692/2速 1.823/3速 1.300/4速 0.958に対して、1速 3.272/2速 1.937/3速 1.350/4速 1.090という変速比を採用。モンキーは1992年に12VのCDI仕様へとモデルチェンジされ、3速までの変速比もこの時にモンキーRと同じ設定に変更されている。 モンキーRの特徴のひとつに、基本的にバッテリーレスの電装系がある。「基本的に」と書いたのは、キーをONにした時にニュートラルランプなどを点灯させるためだけに、2Vのカードバッテリーを搭載しているためだ。こうした部分は、「R」という名前を冠する以上妥協のない作りを目指した、当時のホンダ技術陣の気概を感じる部分である。