【不定期対談】天竺鼠の川原と。クリープハイプ・尾崎世界観 「お笑いと音楽。ふたりが思い描く"理想の表現"とは?」(後編)
お笑い芸人、絵本作家、映像監督、俳優など、ジャンルを飛び越えて唯一無二の存在感を放つ天竺鼠の川原克己(かわはら・かつみ)さんが、各界のアーティストとお互いの創作活動について言葉を交わす新企画。前回に引き続き、クリープハイプの尾崎世界観(おざき・せかいかん)さんをゲストにお迎えします。 * * * ■相反する〝他人への思い〟 川原 「ファンはこう感じるんじゃないか」っていうのを踏まえながら曲を作ることはあるの? 尾崎 これは本当に読めないんです。なんとなくこういう感じかなと思って作っても、まったく反応が違ったりするので。だからもう、最初からズレるだろうと、ある程度予測しています。 でも、そのズレた感想を見るのも大事だと思っていて。誰にも聴いてもらえない時代が長かったので、何かしらの反応があるのはやっぱりうれしいし、幸せなことです。 川原 その反応が作品に影響するってことは? 尾崎 それで変えることはないです。でも、「影響を受けない」というのもある種の影響ですよね、きっと。 川原 そうねぇ。「執着しないようにしよう」っていうのは執着だもんね。だから最近俺は、世の中のみんなをラマだと思うようにしてるのよ。ラマに何言っても意味ないし、ラマにツバかけられて、「なんでツバかけんねん」って腹立ってもしゃあないし。 尾崎 でも、ラマだと思おうとしている時点で人間だと思ってますよね? 川原 (笑)。いや、俺からしたらラマなんよ。ラマにどう思われてるか考える時間がもったいないから、嫌われようとはしないんだけど、好かれようとも思ってない感覚。ラマはラマで生きてるって思えばいいかなって。 尾崎 なるほど(笑)。自分はやっぱり腹を立ててしまうし、なかなかそういうふうには思えなくて。川原さんが作品作りをする上での〝怒り〟は、どういった存在ですか? 川原 うーん、〝怒り〟よりも〝おもしろい〟と思ってしまうよね。でも、お笑いで「なんやねん、おまえ!」ってツッコミが入るようにするのって、怒りともいえるのか。そう考えると、〝腹立つ〟をテーマにすることはあんねんな。世界観くんは? 尾崎 自分ではよく使うんですよね。だからこそ、けっこう人の意見も気にします。「どうせネガティブな感情にさせられるのなら、ちょっと表現に組み込んで利用してやろう」という気持ちもあります。単純に、音楽は大きい音を出すので、怒りの感情と相性がいいのかもしれません。 川原 そこがエネルギーにもなってるんやね。でも、年を取ってくると怒ることも少なくなってくるやろ? 尾崎 そうですね。怒るのも疲れるんですよね。最近は怒ることに対して、「よし、怒るぞ」と一度スイッチを入れているような気がします。川原さんはラマに怒らせてもらっていますか? 川原 (笑)。ラマは怒らそうとしてないからね。ただ生きてるだけだから。