【不定期対談】天竺鼠の川原と。クリープハイプ・尾崎世界観 「お笑いと音楽。ふたりが思い描く"理想の表現"とは?」(後編)
川原 そうなのよね。俺は、「この世にまだジャンルがないもので笑かす」っていうのが一番の理想なんよね。 今はまだ漫才、お笑い、それこそ言葉も、ジャンルの中でできることしかないんやけど、「もうそれジャンル、何!?」っていうのを探したい。そのために、今は世の中にあるジャンルの中で遊んでいって、何を思いつくか。 ちょっと訳あってなくなったんだけど、実は「無観客無配信ライブ」の後に、「観客あり配信あり演者なしライブ」をやろうと思ってたのよ。ちゃんと自分の中でおもしろいものを作って、それを舞台上に流す......って、ここまではたぶん〝わかる〟のよ。 でも、俺はさらに、当日舞台からなるべく遠い国とかにいたいわけよ。「日本では俺の単独をお客さんが見てるのに、俺は遠い国でゆっくりしてる」っていう、既存のジャンルで言えないようなことをしたい。これはもう、誰がおもしろいとかではないんやけど。 尾崎 それは勇気がいることですよね。やっぱりどうしても、みんな理解されたくて表現をしていると思うので。そういう衝動だったり、あえて裏切って逆のことをしてみようと思いついたとしても、その先まで行くというのは。 川原 もっと先よね。枠の中の遊びを突き詰めていったら、究極、俺は誰とも会わずに無農薬の野菜とか育てて、ひとりでニヤニヤしてるかもしれない。 尾崎 自分の場合は、新しいことをやるというより、今あるものを長く続けたいという感覚なので、そこは真逆かもしれないです。昔、急に音楽性が変わって、好きなバンドがどんどんダメになっていったのがすごく悲しかったので、なるべく変わらずにいたいんです。 川原 なるほど。変わらずに居続けることも難しいことやもんね。 尾崎 周りの状況が変わっていく中で、そこだけが変わらないのは、ある意味でめちゃくちゃ〝変なこと〟なので、これからもそれをやっていきたいですね。 川原 おもしろいよね。......やっぱり思ったとおり、〝ちゃんと変なもの〟が開いてる。 ●川原克己(かわはら・かつみ) 1980年1月21日生まれ、鹿児島県出身。お笑いコンビ「天竺鼠」のボケ担当。芸人以外にも映像監督、俳優、絵本作家、音楽活動など多岐にわたって活動中。 ●尾崎世界観(おざき・せかいかん) 1984年11月9日生まれ、東京都出身。ロックバンド「クリープハイプ」のボーカル・ギター。12月4日にニューアルバムを発売予定。執筆活動も行ない、『母影(おもかげ)』『転の声』が芥川賞候補に。 構成・文/佐々木 笑 撮影/TOWA 衣装協力/Pigsty原宿店 LOST BOY TOKYO