イングランド代表がPK戦に弱いイメージは過去のもの? サウスゲイトが6年をかけた“PK強化プロジェクト”が実を結ぶとき
イングランドはキッカー5人が落ち着いていた
イングランド代表がPK戦に弱いとのイメージは過去のものとなりつつあるのかもしれない。 先日行われたEURO準々決勝でスイスと対戦したイングランドは、120分の戦いで決着をつけられずPK戦へ。スイス1番手のDFマヌエル・アカンジが失敗したのに対し、イングランドは5人全員が成功。文句のつけようもない見事な5人のキックだった。 英『The Sun』は、イングランドサッカー協会(FA)を中心とした『PK戦強化プロジェクト』が成果を上げていると評価する。 このプロジェクトは2018年よりスタートし、FAはノルウェーのスポーツ心理学者であるゲイル・ジョルデット氏にも声をかけ、心理的側面からもPK戦強化に努めてきた。ここには代表監督ガレス・サウスゲイトもこだわりがあったようで、6年の時を経て成果は着実に出ているというわけだ。 対策の1つは、『PKを蹴るまでに少し時間をかけること』だ。これは日本の高校サッカーでもよく見られる光景だが、キッカーがボールをセットしてから蹴るまでの時間を長く取ることで、精神を落ち着かせるというものだ。 今回のPK戦ではスイスの選手が主審のホイッスルから平均1.3秒でPKを蹴ったのに対し、イングランドの選手たちは平均5.2秒の時間をかけている。蹴る前にイングランドの選手が何度も深く深呼吸していた姿も印象的で、時間をかけることでメンタルコントロールしていたのだ。 また、今回のスイス戦でサウスゲイトは延長戦の109分にFWイヴァン・トニー、115分にDFトレント・アレクサンダー・アーノルドを投入しており、この2人はPK戦でもキッカーを担当している。実はここにもサウスゲイトなりの反省があったというのだ。 それは前回大会のEURO2020決勝・イタリア戦で、当時のサウスゲイトは延長後半終了間際の120分にFWマーカス・ラッシュフォードとジェイドン・サンチョを同時投入している。これはPK戦に備えたものだが、結果的に2人は全く試合に入れないままPKキッカーを務めている。結局2人ともPKを失敗しており、試合終了間際の投入は心理的に悪影響との結論に達したようだ。 今回も短時間ではあるが、トニーとアーノルドは少し試合の空気に触れることができた。このあたりもサウスゲイトなりの工夫だったのかもしれない。 イングランドの試合は全体的に面白くないと批判されがちで、攻撃は決してスムーズではない。準決勝のオランダ戦もPK戦に突入する可能性がありそうだが、イングランド陣営は自信を持って臨めそうだ。
構成/ザ・ワールド編集部